『おくりものはナンニモナイ』/パトリック・マクドネル・谷川俊太郎訳
文字数 1,726文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第39回目は、パトリック・マクドネルさんの『おくりものはナンニモナイ』です!
海外在住の友人に教えてもらい、ひと目で好きになった『Mutts』という作品があります。パトリック・マクドネルさんによる新聞連載漫画で、アールという犬と、ムーチという猫が登場します。
Mutts(マッツ)の意味は「雑種」。我が家の歴代犬は全てが雑種でしたから、タイトルごとお気に入りになりました。
絵柄がとにかく可愛くて、シンプルなタッチなれど、大変表情豊か。『スヌーピー』の作者であるチャールズ・シュルツさんから「時を超えた最高の作品!」と賛辞を贈られたことでも有名です。
そんな『Mutts』は日本語版がありません。20か国で発売されているというのに、なんてこと。
絵を見ているだけでもじゅうぶん楽しいとはいえ、とても勿体なく思えてなりませんでした。
でも大丈夫。漫画は翻訳されていませんが、嬉しいことに日本語版の絵本が出ているのです。お隣同士として暮らすアールとムーチの、心あったかくなる絵本が。
タイトルは『おくりものはナンニモナイ』(あすなろ書房)で、翻訳は詩人の谷川俊太郎氏という豪華さ。
ある日ムーチはアールに贈り物をしようと思います。特別な日なのかどうかは明かされていません。唯一わかっているのは、ムーチはアールが大好きだということ。
「ムーチは かんがえた。うんと かんがえた。
なんでももってる ともだちを よろこばせるものって なんだ?」
葛藤して辿り着いた答えは
「ナンニモナイ!」
これは私たちもよくぶつかるお悩みではないでしょうか。大切な人には絶対に喜ばれるものをプレゼントしたい。でも、付き合いが長ければ長いほどアイデアは尽きているし、相手も大抵のものは持っている。まさに「あげるものはナンニモナイ!」という状況です。
猫のムーチは買い物に出かけ、一生懸命アールへの贈り物を探します。はたして、素敵な品物は見つかるのでしょうか。
これからラストまでの展開は胸熱の一言。小さな子どもたちは本当のテーマを理解するのに、少し時間がかかるかもしれません。可愛い絵でありながら、内容は哲学的とも言える絵本。
今現在、世界のあちこちでいさかいが起こっていますよね。全人類がムーチのような考え方をすれば、きっと世界は幸せに包まれるに違いありません。今年のクリスマスプレゼントはこれで決まり、です。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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★国樹さんちの愛犬がLINEスタンプになりました!
[MIX犬のきんとき&かんな]
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金時(きんとき)
黒白のMIX犬/11歳/甘えん坊なシャイボーイ
柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/9歳/自由に生きるおてんば姫
戸惑いつつ覗き込む金時と、最初から堂々としていた柑奈の違いが面白い1枚」