第33回/夢コントロール

文字数 1,973文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 「夢」の内容とは、寝ている時に無意識に嗅いだ匂いによって影響されることも多いらしい。ネットで見た。ソースは知らないし実感もない。なぜなら僕は生まれつき病気で嗅覚がない。


 なので、僕は就寝時に周囲の匂いによって夢が影響されることはあり得ないのですね。逆に言えば、健常な人間は眠る前にアロマでも炊いていたら、その香りに引っ張られた優雅な夢が見られる確率が上がる可能性があるかもね。


 それでも夢が就寝寸前の環境から構築され易いことは体験している。たとえば、最近僕は動画を垂れ流しながら眠るようになったんですね。ベッドの上にアームでiPadを固定し、鉄道がゆっくり海外を移動する動画を眺めながら、次第に睡眠薬の効果で訪れる眠気に任せて寝落ちする。そんなサイクルを続けています。


 するとどうでしょう。眠る時に見ていた動画、というか就寝中に流れている音を脳が処理して夢に出現する率が明らかに上がった。この前、鉄道動画が切り替わって自動再生で配信者がポケモンカードのパックを剥いていく映像になったんですよ。そしたら夢の中の僕はデパートでポケモンカードを探し回って疲弊していくのです。どちらかと言えば悪夢寄り。


 なんでこんな夢を見たのだろうと、起きてiPadの履歴を確認したらポケカ開封動画があったのです。僕は嗅覚がない分、聴覚からの刺激が夢に大きく影響する可能性がある。


 それに気づいて、いろいろ試してみた。まず、単純にせっかくだから夢でしかできないことを体感するべきだ。つまりは、二次元キャラクターとの邂逅である。夢の中で二次元キャラクターと話している時、自分は「本当に彼女がそこにいる」と認識する。それが当たり前のことすぎて、どんなにありがたいことか、現実の僕がどれだけ求めてきた光景かも気づかずに……。そして、起床して失った瞬間の大きさと彼女の残滓を抱いて咽び泣くのです。


 で、アニメを流しながら寝てみた。けれども、あまり夢に影響しないし、単純に眠り難い。瞼の裏を貫通して聴こえるアニメキャラたちの賑やかな音声に釣られて、思わず目を開けて確認してしまう。それでも薬の効果でどうにか眠れたとて、アニメは場面が目まぐるしく切り替わるからか、固定したイメージが夢に反映されない。


 となるとVtuberの雑談配信が最適解だ。雑談配信はトークテーマもある程度まとまっているし、映像的にはキャラクターが左右に首を振る程度なので、音さえ追っていれば目を開く必要もない。けれども、肝心なこととして「恥ずかしい」。そりゃ二次元美少女が夢に現れたら嬉しいよ。けど、実際「Vtuberの夢を見ようと頑張る」って思春期すぎるだろ。


 といった葛藤の末、諦めた。そもそも彼女たちの声は眠る際に聴き続けるには甲高くて愉快すぎる。いざ夢に現れたら、嬉しさよりも恥ずかしさが勝るでしょうし。いい歳したおっさんが夜な夜な配信者と仲良く話す夢を見る……これはつらい。悲しいことだ。


 結局、眠る時はテクノを、だいたいクラフトワークを聴くことにしています。彼らの奏でる電子音に精神を委ねて横たわっていると、自分もプログラムされたコンピュータになった気分で心地よい。ちなみに夢にクラフトワークが現れたことはありません。恐らく、曲より声が重要な気がする。


 話は変わり、この前「超てんちゃんの香水を作りませんか?」という話になった。香水で喜ぶ人は多いことも説明され、ファンが望むならもちろんやりたいけれども、前述した通りに僕には嗅覚がない。そうなると商品の監修ができず、イメージするベースも完成度も保証できないわけです。まぁどうにかするつもりですが。


 もし、超てんちゃんの香水が発売された際は、ファンはその香りを纏って超てんちゃんを身近に感じたり、寝具などにふりかけて彼女がそこにいるかのような体験ができることでしょう。その香りに包まれたまま眠りに落ちれば、夢でインターネット・エンジェルと会える可能性がある。いいね。


 そんな感じで、みんな夢くらいは幸せにいましょうね。それもなかなか難しいけれど。おやすみなさい。

【CCP ミスター・VTR】


キン肉マンの超人『ミスター・VTR』の貴重な立体化。キン肉マンほどの人気シリーズでなければ立体化はほぼないくらいの人気なので、とても嬉しい。機械の超人って戦っていない時の日常生活で、自身の異形さと不便さをどう感じているのだろうと想像すると怖くなると同時に、これくらいどう行動するか分かりやすいデザインになりたい欲があります。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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