第45回/真のダメ人間について考えてみよう

文字数 2,727文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


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 今回は、『第16回/最後に善が勝つ』のさらに踏み込んだ話を書いていきます。先に言っておきますが、自分なりに論理的に辿り着いた結論であって、綺麗事や説教では決してない。そんな安い解釈は捨てて読んでもらえると幸いです。


 みんな自虐のバリアを張ることが大好きなので、「ダメ人間アピール」に余念がない。まあ自信満々に「俺は強い!」と胸を張れる若者が世界にどれだけ居るのかって話ですが。そんな自虐の海の中で「真にダメダメな人間」とは誰かを考えてみよう。ちなみに、僕もこの「ダメ人間アピール」で道化をやってきた人間ですから、今回のコラム自体も巨大な自虐と思ってくれていい。


 どんなに現状がダメダメな場合でも、素直でいる限り、可愛げが生まれて誰かが手を差し伸べてくれる確率、まあそこまでいかなくとも親身になってくれる可能性はあがると考えています。「こいつは変なやつだけど……悪意はないしな!」と認識されると、「素直なダメなやつが好きな大人(そういった人たちが確実に少なからず居る)」が助けに来てくれるのだ。なぜなら、大人はどんどん自分が人生の主役から離れていくので、代わりに他者の人生に介入することで気持ちよくなろうとするからである。ちょっと癪に障るところもあるかもしれないが、それでも好意で助けてくれるのならあやかってみよう。


 が、「ダメダメなうえに素直」な人間は希少だ。何故なら、現代ではネットを介して簡単に暴れることができる。「ダメダメなうえに攻撃的」な人間が発生し、攻撃的な人間に声をかけるのは難しい。自分が攻撃対象にされるかもしれないし、当人に協力することで、間接的に彼が攻撃している人間たちの敵になることになる。「リスクを負ってでも俺は困った人間を見捨てないぜ!」と近づくやつが居たとしても、そいつは十中八九裏がある。


 つまるところ、素直でいるほうが道徳的な問題でなく「得」なのですが、事態はそう簡単には行かない。先述したように、現代には落とし穴でいっぱいだ。素直さを捨てる代わりに瞬間的な快楽を得られるマーラ(煩悩)の誘惑に満ちている。元よりダメダメな自分への現実逃避が目的なのだから、簡単に煩悩に流されるほうが自然ですから。


 なので、こんな狂った世界で「素直」でいられるだけ才能だ。そして美徳だ。パッと見て分かりづらいステータスなので隠れがちだが、「素直」「純粋」は立派に重要スキルである。その才能やスキルを持って生まれたのだから、そもそも真の「ダメ人間」ではないとも言える。悪意の誘惑を振り切る強さを大事に生きよう!


 となると、現代でのダメ人間は、「誰が見ても明らかに助けて/かまってもらいたがっているのに素直になれず周囲や社会に(主にネット上で)攻撃的な人間」となる。SNSがここまで広まっていない時代は、自我の発露の場が少なくて、周りから「素直だ」と誤解される率がまだあったはずだ。こんなに簡単にネット上で架空の人格を作り、すぐにでも結果が見える形で何かを攻撃できる時代は恐ろしいものだ。それ以上に恩恵がたくさんあるけれど、コンプレックスで雁字搦め状態の人間がそんな当たり前に気づく/受け入れるわけもなし。


 とはいえ、なにかと戦っているうちに味方ができる。敵の敵は味方だ。たとえ倫理や論理がどんなに間違っていようとも、巨大ななにかと戦闘していると必ず持ち上げられる。そこで孤独を癒やすことはできるし、味方が助けてくれることもあるだろう。そこで人間関係を学び、失敗し、成長することだってある。周りの攻撃性がヒートアップするに連れ、ついていけずに冷静になるチャンスもあるでしょう。人間、誰だって道を踏み外す時期くらいある。今がその時だっただけで、何度でもやり直せるし、「攻撃的な人たち」の思考や思想を身をもって体験できたことは、後に大きな力となる。そうなると、「素直だから助けてもらえている人」より人間的な成長をしているとも言える。新しく正しい道を選べるかどうかは運も絡むだろう。運命は複雑怪奇。


 さて、話を「ダメ人間」に戻すと、その機会すら得られないからダメ人間だ。「攻撃的な集団の中ですら孤立する」パターンもあるし、あんまり頭が悪すぎて敵の敵からも味方扱いされないこともある。こうなると逆に愛らしいんじゃないか。誰にも相手されなさずぎて、もはや「無害」だ。一周して純粋。ここまでくると、それはそれで声をかける変人が必ず現れる。そういう「可愛げのあるダメ人間を救うことが好きな大人」も一定数いる。当然、本人もなにかを拗らせているが、なにか刺激的なことが起きる可能性はある。刺激は大事だぜ。


 結論へと話を移そう。真のダメ人間とはなにか、それは……「「誰が見ても明らかに助けて/かまってもらいたがっているのに素直になれず周囲や社会に(主にネット上で)攻撃的かつ変にプライドもあってそれすら中途半端な人間」となる。


 ダメ加減にすらブレーキがかかり、「俺もダメ人間だけどコイツラとは違うから」という態度を取りつつ、時折「やべっやりすぎた」と自制が効いてサッと引く。どんなときも前に出るイベントが一切ないため、誰かが彼・彼女のSOSに気づいて手を差し伸べることもない。「誰にも見つけてもらえない」。真の孤独。それでいて善にも悪にも振り切れない……が、それなりに他人を攻撃してもいるので触れづらい。この立ち位置が最も「ダメ人間」じゃないか。それ以外の人間は、ある意味で誰かに救われやすい要素を持っている。「才能」がある。真に才能がない場合、すべてが半端すぎて良くも悪くも人生に転機が生まれないのだ!


 ……まあ、実際はそこまで残酷なことはないでしょう。嬉しいことに、現実にもネットにもセーフティネットはそれなりにあるし、どんな状態からでもその気になれば正しい方法で孤独じゃなくなることもできる。そのためにはプライドを捨てる必要もあり、自身のプライドが至極無価値なものと認めてしまう瞬間は、とてもつらいことですけどね。


 人間、どうでもいい他者の「ぷらいど」なんか目に入らないのだ。

【ねんどろいど でじこ】

デ・ジ・キャラットがまさかの令和に復活したおかげで、ついにでじこもねんどろいどに。逆に今まで無かったことが不思議なくらいの馴染みっぷり。そもそもデフォルメ体型なので違和感全くなし!

グッスマさん、ぜひともうさだもお願いします。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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