第25回/飲み会嫌い

文字数 1,782文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 「飲み会」なる行為がおどろくほど苦手になりました。もとからあまり好きではなかったのですが、ここ最近はできるかぎり避けたいと願うほどに。


 理由としては頻度が増えたことでしょう。


 ゲームをリリースして以来、いろんな人と合わざるを得なかった。べつに特定の誰かが嫌だってわけではありませんが、誰かと親密になるため飲み会は必須であり、そのたび社交によって精神のゲージが削れる。

 社交であるのだから、そこには社交辞令が生じる。社交辞令はその場の社会を円滑に進行するための誇張と嘘のことだ。それがつらい。表面上の会話でなにか見えてくることはほぼない。社交辞令だって人間関係の土台を固めるために必要であることくらい理解しています。けれど、つらいものはつらい。


 自分が言うことよりも、他人に言われているときがつらい。とりあえず「ゲームすごいですね!」とか「記事書いているんですよね!」みたいな。これから仕事になるかもしれない相手なのだから、まず言っておこうレベルの話題が展開されてしまった時の気まずさ。何十回・何百回も同じ反応を返さないといけないので、相手が悪いわけじゃないと知っていてもやっぱり疲れる。ループものみたいな気持ちになる。


 なので、僕はクリエイターなどと会った際、本当に興味のあることしか発言しかしないことにした。たとえばミュージシャンに会ったらその人が作曲したなかで好きな曲を挙げたり、相手の仕事で関心ある部分を質問したりと。ありきたりなコミュニケーションを徹底して避けることにしています。本当に相手の作品が良かった時に「○○よかったです!」と笑顔で告げる。なんとなくわかるんです。相手が本心から気に入ってくれているかどうか。だから僕はそれを伝える。


 今はゲームが好調なので、その場に僕がいると「褒めないといけない」空気が生まれてしまう。そりゃ褒められることは嬉しいけれど、その場の人たちだってなにかを作ったりしているのだから、それを上書きするほどじゃない。僕のことはいいのさ。近況報告なんて軽くで済ませて、あとは好きなアニメや漫画、最近観た映画とかの話をしようよ。それが一番いいじゃん。もし仕事相手だったとしても、そこからなにか見えてくる可能性のほうが大きいでしょう。なんなら「この作品が気に食わない!」だっていい。はっきりとした意見性があるのなら良い話題だ。意味もなく会話をつなげて「仲良くなった感」だけ成立させるより余程いい。


 できれば嘘や誇張を述べたくない。自分の気持ちだけははっきりしておきたい。友人たちは「にゃるらのゲーム自体はよく知らない。どうでもいい。それより来週、公園行こうぜ」みたいな態度なんだ。そんなもんだろ。そうであってくれ。いちいち「にゃるらさんの活躍は聞いてます!」みたいな話から入るの相手だっていやだろ。こちらも「○○さんの名前は見たことあります! お会いできて光栄です!」とか言いたくないんだ。


 それでいて、アルコールの効果で大声出して手を叩いて笑って……みたいな状態も無理だ。ずっと静かでいい。会話するだけなんだから、そもそもお酒も不要でしょう。そんな液体なくたって、僕はお前とアニメやマンガの話をしていたら楽しいぜ。わざとらしく声を張り上げなくてもお前の渾身のギャグにクスッとするぜ。無理に互いを褒めなくたって、好きなモノや目指す先が同じなら友達だぜ。


 そういうことをずっと考えている。それでも人々は僕を飲み会に誘うし、そのたび僕も「やれやれ……騒がしいなお前らは」と悪態つきつつ席に着く。「こいつめんどくせーっ!」とみんなが弄る。


 嫌なものは嫌だが、それでもやっぱり人といると安心する気持ちもある。意外とみんなそんなものなのかもしれないですね。

【担当編集から買ってもらった万年筆】


僕が万年筆にハマっていると話したら、このコラムの担当編集が誕生日にプレゼントしてくれました。嬉しすぎる。このコラム以外の企画も進めているので、文字を書くたびにプレッシャーを感じて欲しいとのこと。怖いけど頑張るぜ。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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