第35回/企画書を書いてみよう!

文字数 1,915文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


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 いつか何者かになりたいと考えているそこのキミ!!! いますぐ真っ白な紙に企画書を書くぞ!!!

 ジャンルはなんでもいい。ゲームでも漫画でも小説でも、なんならアニメ4クール分の構成でもいい。どうせ独りで妄想するだけなんだから大きくでたっていい。夢はでっかく持とう。誰も叶うことを保証してくれないけれど。


 ゲームならちょっと違うが、漫画や小説、アニメならキャラクターだ。めちゃくちゃ魅力的な主人公の設定や見た目を書こう。絵が描けないなら見た目は「参考キャラ」の画像を貼るだけでいい。最高に萌え萌えだったり、最強にカッコよかったりしよう。もしくはヒロインからでもいい。とにかく魅力溢れる斬新なキャラを創造してみる。


 そこから、そのキャラクターが活躍するためのストーリーを設計する。漫画なら一旦の区切り。小説なら一巻分のプロットを書いちゃった方が後々楽だ。アニメなら話数分。大変だぜ。

 まあ他にも必要なことは無限にあるものの、まずはメインキャラクターとストーリーの概要だけでいいでしょう。ゲームならシステムはさすがに書いた方がいいか。とりあえずそれだけ書いてみてわかる。……これ、本当に面白いか? 成立しているか?


 頭の中には最高最強の物語が展開されており、無敵の主人公と儚げなヒロインがかつてない大冒険を繰り広げ、序盤の時点でSNSは大反響、瞬く間に重版に重版を重ね、気づけばトントン拍子にアニメ化のオファーが。果たして、どのスタジオからの依頼を通そうかと贅沢な悩みでいっぱいだ。……が、紙に書き連ねた文字列はどうだ。新規性や話題性はあるだろうか。そもそも話として成り立っているだろうか。どこでどの層がどう反応するかイメージできているか。


 残酷だ。現実はどこまでも残酷である。


 頭の中ではあんなに面白かった大名作が、ラフであっても企画書状態にしてみると、なんか……なんかだ。これだったら、同じジャンルの過去の名作たちに触れたほうが1000倍いいんじゃないか? わざわざ自分が創る意味があるか? というか、そもそも他人が楽しめるほど形になっているか? つらい、つらすぎる!


 いや、そんな葛藤はまったくない。自分がいま書いた企画書は完璧に面白い! と感じたなら、あなたは天才だ。今すぐ、そのラフを完成させ、創作へと取り掛かろう。一瞬は自分の才能が怖くなるほど震える夜もある。それが朝起きて冷静になった頭でも継続していたら本物だ。それは驕りかもしれないが、それでも何かに取り掛かることが何より大事である。たとえやっぱり独りよがりだったとしても、発表や提出できただけでワナビーの大半より前進している。


 単純に実力不足で立ち止まってしまったなら、たくさん知識を吸収して再挑戦だ。世の中には無数に名作がある。あの映画やこのアニメ、文学に大長編漫画が溢れまくりだ。作品じゃなくて教養でもいい。興味ある分野の専門書を掘っていくのももちろん力になるでしょう。


 そうして、再び企画書へ向き合う! するとどうでしょう。前よりちょっぴりだけキャラクターやストーリーに魅力が増している気がするではないか。これは……これはいけるかもしれないぞ!!!


 ……と書き終えた時は興奮したものの、起きて読み返すとなんだこれは。恥ずかしい。こんなものを全世界に披露しようと考えていたのか自分は。ふざけているのか。黒歴史確定。家族や友人から一生嘲笑われて過ごすこと必至。インターネットでもたびたびスレが立って永久にオモチャとして語り継がれていく。


 ということもない。リアルはもっともっとシビアだ。ただ、誰も注目せずにひっそりと消えていく。それだけ。箸にも棒にもかからないとはこのことだ。無関心。自分が興味ない作品をそっと閉じて3秒後には忘れているあの目。


 悲しいね。全部忘れよう。Switchを起動してゼルダでも遊ぼう。任天堂はすごい。こんなにすごいものがすでにあるのだから、自分なんてちっぽけで不要な存在なのだ。好きなだけハイラルを駆けたら、お布団に包まって眠ろう。おやすみなさい。

【超てんちゃんとあめちゃんのぬいぐるみ】


お気に入りニディガグッズ。ぬいぐるみが出るとなんか人気がでてきた実感が湧きますね。なんでだろう。この超てんちゃんはサンプルなので脚のハートの位置が左右逆のエラー品。ポケモンカードなら高額プレミアになるタイプのミスですよ。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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