第51回/秋葉原はユーサネイジアの夢を見るか?

文字数 1,739文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


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◎◎◎今回はPRです◎◎◎

 このコラムもそろそろ一周年を迎えるわけですが、それとは無関係にたまたまこのタイミングで初めて編集側からネタがやってきました。


 11月8日(水)、「コミックDAYS」連載漫画『秋葉原はユーサネイジアの夢を見るか?』(春野ユキト)が発売するとのことでして、以前に秋葉原に住んでいた僕に、新刊の宣伝兼ねて「秋葉原」テーマで一つどうだという話が来たので、よしではお受けしようと、まあお受けしようって重々しい雰囲気ではなく、お世話になっている編集さんの役に立ちつつお題が一回分勝手に用意されているならそれでいいだろうってゆるい感じです。案件未満ですね。


(編集部注:春野ユキト先生・「コミックDAYS」担当者さん、PRご依頼ありがとうございます!)

 で。1巻分の連載を送ってもらい拝読したのですが、なんとこの漫画はこのタイトルで「秋葉原の街並みや必要性」に重点を置かず、「コンカフェやメイド喫茶の街」として描いている。電気街・かつてオタクが憧れた夢の跡といった歴史を大胆に省いている。おお、歴史が変わったなと。


 そうなんです。秋葉原、今でも中央通りやジャンク通りにメイドさん、今だとメイド服でないコンカフェ衣装の方々がずらずら並び、もちろんオタクショップも立ち並んでいるのですが、通販もぐんぐん発展した昨今、メイド喫茶文化が強まった代わりに電気街、オタクの街要素はみるみる薄くなったのですね。僕も気づけば中野へ引っ越しました。別に「秋葉原は終わった」と思っているわけではないですが、少なくとも街のあり方はずいぶんと変化していった。なので、この漫画のように「秋葉原」はあくまで舞台、メイド喫茶やコンカフェが立ち並ぶ場であって、秋葉原そのものの存在意義を描く必要性が消失したのだ。歴史の転換点。


 すごい。ネットでマニアックなアイテムも同人グッズも簡単に通販できるいま、「二次元の萌え」はわざわざ家の外へ出てまで摂取する意味はなく、すべてスマホ一つで解決できる。そうなると、いま基底現実に求められているのは、ありていに言ってしまうと「肉」である。「生身」のぬくもりに需要が生まれた結果、「萌え」の最先端であった秋葉原は、次第に二次元から三次元の萌えへ移ろい始めたのです。みんな、「二次元最高!」と言いつつ、肌の温もりが恋しくて耐えきれなくなるのです。まあ、普通のお店はお触り禁止でしょうけど。


 良い悪い、とかでなく、ただそうなった。なったものは仕方ない。文化の変化もまた一興なわけで、「レトロなサブカルチャーの聖地」として中野ブロードウェイはギリギリまだ元気を保っているし、若いオタクたちの新たな集合地点として池袋が発展していっている。かつて秋葉原に求められていた「オタクの街」はだんだん池袋へとシフトし、秋葉原はもう少し「肉」っぽいサブカル街になっていくのではないか。それはそれで唯一無二の場所なので面白くは思う。もちろん今でもふらっと寄ってラジ館をのんびり回ったり、大きなゲーセンをひょこっと覗くだけで充分堪能できはするし、まだまだ変な街のままで、それでもなお「オタクの街」の代名詞として君臨できるほどの気力はある。実は大阪の日本橋もだいぶコンカフェで埋まってきましたけどね。いいじゃないか。みんな現実の異性にも萌えたいのだ。「萌え」という単語で醜い肉欲をオブラートに包んでおきたいんだ。ま、ほどほどにね。


 といったことをぼんやり考えていたところへ、まさしくそのような変遷を反映させた漫画が送られてきたので、なるほど〜と納得した次第である。ほえ〜。内容に関して触れるとザ・宣伝になるので、どうぞこれを機に気になった方は、まずは一話の試し読みなどどうでしょう。

今回はPRでした。来週も月曜深夜に更新予定です。おやすみなさい。

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