第38回/100万本でも独り

文字数 1,538文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 そういえば、この連載のタイトルは「にゃるらが壁に向かって話してる」であり、深夜の僕がまるで壁に喋っているかのように、考えていることを孤独に淡々と文章化する主旨でした。特に主旨からブレた回はないつもりですが、スタート時の気持ちの確認は大事ですからね。なんだかんだ半年以上も続いている連載ですから(えらい!)。


 めでたいことに、拙作『NEEDY GIRL OVERDOSE』が100万本を達成しました。たくさんの方々に感謝ですね。ちなみに、それとは関係なくニディガの世界観を利用した小説も一冊書き終えたのですが、そちらは、このコラムの編集さんが担当してくださっています。毎週の変なコラムに目を通すのみでなく、10万文字近い僕の駄文すら校正してくれて、なんとお礼を述べたものか。


 そんな裏話とは関係なく、「100万本にも到達したのだから、なんかすげー楽しい感じになっているんだろ!?」と思われているかもしれません。それがなんと……特に変わらず一人でこうしてパソコンをカタカタしております。


 嘘じゃないぜ。だってそうだ。祝ってくれる家族は居ないし、友人は良い意味で僕の創作なんかに興味がない(それが逆にありがたいが)、一緒に作ってきたスタッフは住んでいる地域もバラバラ。別に「100万おめでとー!!!」とどこかで集まってパーティが行われる機会なんてないのだ。100万本到達時も、まずDiscordで連絡があり、無論、その時も家でゴロゴロしている際中だったし、他人に漏らすわけにもいかないので、一人でスマホに向かって「そっかー」となっただけである。世の中、そんなものさ。


 なので、正直なところ、なにかを成し遂げたような達成感はまだ薄い。100万という数字に達した瞬間、特になにかが変わるわけでは無いし、一番喜んでくれているであろうファンの姿は、モニター越しにしか確認することができない。プロデューサーは、「将来、100万本のゲームを製作したという事実が名刺代わりになる」と言っていた。ブームが過ぎ去り、どんどん過去の人となった際、「で、コイツはなに?」と周囲から言われそうなタイミングで、「昔はすごかったのか!」とビックリさせることができる。こう書くとなんか小物っぽいな……。


 のんびりゆったりとした老後をエンジョイしつつ、しかも若手のクリエイターに対して「へー、みんなすごいね。僕も昔はちょっとゲーム作っていたんだけどね」と強キャラぶれる資格を得たのだ。そう考えると嬉しい。「ステータスは高いけれどレベルが上がりにくいピーキーな老人ユニットキャラ」のポジションへの切符を手にした。まあ、これからも変わらぬ勢いでノリにノッていけることが一番良いのだが。


 それはそれとして、このまま何度かあるであろうめでたいタイミングで、いっしょに喜んでくれる何者かが隣に居てくれる日は来るのか。こうしてコラムのネタにしなくてもいいくらい、派手にぱーっと騒いでみたいものである。いや、どうあっても気質上、派手には無理かな……。もしなんらかのパーティに参加したとて、隅の方で腕組みしながら「フン……騒がしいな」と壁に持たれている自分しか想像できない。

【ベルゼブモンのフィギュア】


小中千昭の傑作『デジモンテイマーズ』より、ベルゼブモンのフィギュア。マリリン・マンソンと並び、僕の子供の頃のヒーロー。後にウルトラマンベリアルも自分の中のヒーロー枠に入る。黒とか紫とか大好き!

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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