第1回/にゃるらです

文字数 1,708文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra

 独り。


 いま、自分はそれなりに広い部屋で、大量の本やフィギュアに囲まれながら、毎晩の孤独に耐えております。


 自己紹介をしておきましょうか。僕は『にゃるら』なんて元ネタバレバレの名前で10代の頃にTwitterを開設しまして、その時も孤独を誤魔化すためにブログを更新し、文筆に耽ることでどうにか人間社会と接点を保つ日々を繰り返すうちに、だんだんと仕事の依頼が舞い込むようになり、諸々と経験を積んだ後、今年のはじめに『NEEDY GIRL OVERDOSE』なるけったいなタイトルのゲームを総監督(企画・シナリオ)としてリリースしました。

 このゲームがたいへんありがたいことに何十万本と販売本数を伸ばしてくれまして、めでたく僕は、大好きな本とフィギュアをたくさん置ける部屋を借りることに成功したのですね。天井が3m以上あるような複雑な構造ゆえに借り手が見つからず、まるで「ピーキーすぎて凡人には無理だ」と言いたげな物件であったため、逆に「僕が最高のオタク部屋として使いこなしてやるぜ!」とクリエイター精神に火がついたのです。まあ借り手が居ないぶん、面積に比べて家賃などが抑えめだったということもありますけど。

 僕は、とにかく本とフィギュアが大好きなんです。それらが綺麗に並べられている空間を至上としており、できるだけ家電も置かないようにしている。そのスペースで本を並べたいし。食事に興味が無いので料理もしたことがない。最近まで冷蔵庫すら無かった。そんな生活なので、他人が遊びに来た際に「人間の生活感が全くない……」と恐れられることすらあった。


 そんな部屋で深夜にぼんやりしていると、やっぱり望んで創った空間と言えど寂寥感が生まれます。フィギュアやゲームなど、楽しげなものがたくさん置かれている空間にぽつんと独り。このギャップがliminal Spaceのような悲しさを漂わせる。もちろん、この文章もまた人間味を感じさせない部屋の真ん中で黙々と打ち込んでおります。キーボードの打鍵音だけが、薄暗い自室に響き渡っていく。

 「人は、他人といる時こそ真の孤独を感じる」と書いたのは誰だったかな。坂口安吾あたりが、そのようなことを言っていた気がする。今の僕には、それがよくわかる。


 今やインターネットを開けば、誰でも不特定多数と繋がれる時代です。であるからこそ、無数に他人と繋がっている数だけ孤独を覚える。深夜のタイムラインには、誰も商売っ気のあるつぶやきを投稿しておらず、ひたすら各人の「孤独」だけが流れていく。SNSに集まっているように見えて、それぞれが壁に向かってひとりごとを垂れ流しているだけなのです。この寂しさがいい。人は本質的に独りであることが理解できていく。


 今回の連載を始めたのも、そんな孤独を少しでも薄めるためだったりする。編集さんが声をかけてきてくれたことが嬉しかった。僕にかまってくれたことが、興味を持ってくれたことを暖かく思った。こうして連載を始めることで、少なくとも編集さんを通して誰かと繋がれているなら、深夜の孤独を僅かでも薄めてくれるならと、そう思って筆を執った次第。寂しがり屋なんですね、どうしても。


 文章を読むタイミングは基本的に一人でしょう。今も、読者のあなたは黙ってスマホなりモニターに向かって、暇と寂しさを誤魔化すために、僕なんかのコラムを読んでくれているはずです。


 たとえ一瞬であろうとも、あなたの孤独を薄められたならば、こうして長文を書いていく甲斐があったというものです。互いに孤独でありながら、それでも繋がっているようなフリをしていきましょうね。

【巨大なぬいぐるみユリカ様×3】

『アイカツ!』に登場する600年の時を生きる吸血鬼・ユリカ様のでっかいぬいぐるみ。でっかいので場所を取ってしまうものの、そもそもユリカ様を置けないのなら生きている意味がないのでこれでいい。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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