第6回/寂しさからの逃避

文字数 1,819文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 深夜に一人でインターネットを眺めていると、急に巨大な寂寥感に包まれ、「だれでもいいからかまってーーー!!!」と叫びたくなりますよね。いや、ならない人もいるかもしれないですが、僕はなるのです。もちろん、現実で叫んだところでなんの意味もないので、リアルでは黙々とネットサーフィンしているだけですが。ちなみに、このコラムの編集さんは家で鬱々とした言葉をわりと大きな声で発しているらしい。大丈夫だろうか……。


 まあ実際に声を出したところで、家族がいない限り誰も話し相手にはなってくれないわけで、現実的にはSNSかLINEあたりに投稿や連絡を始めるのではないでしょうか。とは言え、深夜なので人も少なく、さらには直接的に「かまってーーー!!!」と書き込むのは恥ずかしい。結果的に、悶々としながら特にアクションを起こさず朝を迎えたりするわけです。


 そういう時、ネットの荒らしのことを考える。インターネットを荒らして回ることで、誰かに反応してもらうことを生業にしている人たちは、この心情の極地にいるのではないか。


 古くは匿名掲示板に荒らしが棲んでいた。特に意味のない文章を連投することでスレを埋めるパワータイプや、何気ないレスへ野次を飛ばしてレスバトルを始めるテクニックタイプなど、荒らし方は様々。もちろん、総じてまともな利用者からすれば「邪魔」以外の何者でもない。


 が、今ではすっかり匿名掲示板の勢いも衰退したため、あまり掲示板を荒らすという行為に走る人は減ったと思われる。そもそも、誰かに反応されたいがために行っているため、人口が多い場所へと荒らしも自然に流れるしかない。となると、彼らはいまSNS上に乗り込んでいく。いわゆる「捨て垢」で、有名人や流行りのツイートに対して心ないリプライを飛ばすよことで、誰かからの反応をもらおうと企てる。


 どんな有名人にも必ずアンチが存在するので、例え何一つ相手が悪くない発言でも、無理やり粗を探してリプライすれば、アンチ仲間たちがこぞっていいねやRTをする。例えば、有名人がめちゃくちゃかわいい平和なハムスターの画像を貼ったとしても、「おまえこれ本当に世話できてんの?」なんてリプライを飛ばせば、2,3人くらいはアンチがいいねするし、もしも的確な揶揄を飛ばすことに成功したら、何百人も食いつくことがある。さらには、ファンからの擁護もとんできてレスバトルに発展したら大成功。本人からすれば、孤独な夜の悲しみが薄まれば万々歳なわけで、議論の内容や正しさなんてどうでもいいのだ。誰かが反応し、なにかの数字が増える。こうして世界と自分の接点を感じていく。


 まあ、誹謗中傷や侮辱罪、リプライに対しての通報機能が整備されつつある昨今、そのしょうもない荒らし行為もどんどん不可能になり、一歩間違えたら裁判沙汰で地獄行きなんて珍しくもないのでしょうけど。


 誰でもいいから「かまってほしい」気持ちは大いに理解できる。僕なんかは各SNSにフォロワーがいるから、なんらかの投稿をすれば人が見てくれる。とても嬉しいことにね。しかし、そうじゃない人たちはどうするか。もう何かを攻撃してでも、自分を見つけて欲しい・共感して欲しいとなってもおかしくない。これは悲しいことだ……。とは言え、自分の方に矛先が向いたら、当然然るべき対応をしますが……。対応っていうかブロック一つで終わりなわけで、嫌でも目に入る確率の高い匿名掲示板とちがって、現代のサービスは良く出来てるなあと感じたり。


 対策としては、やっぱり勇気を出してSNSに対応し、友人を作って他人に迷惑をかけない方法でかまったもらうことだと思います。それができたら苦労しないんですけどね。もう、家の中で大声で「たすけてーーー!!!」と叫び続ける方が正解なのかもしれません。

【セガサターン】

深夜に起動してノスタルジーに浸る。セガサターンと僕は、ほとんど同じ時期に誕生したので、もしかしたら中古で買ったコイツも僕と同い年かもしれません。今でも全然起動してくれるものの、パワーメモリー(セーブデータを保存する装置)を読み込む確率が年々下がっていて歳を感じさせる。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色