第17回/一人で悲しみを抱えながら落ちていく

文字数 1,751文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 いろんな事情があって、今夜はかなりへこんでいます。


 しかし、理由は書けない。理由は書けないのに、落ち込んでいる様子だけが垂れ流される。このパターンが受け手からすれば最もウザいことこの上ないでしょう。ごめんね。


 Twitterを眺めていると、「落ち込んでいる」という情報だけが流れてくる。すると、やっぱり気になってしまう。心配とも違う完全な興味ですが。この人はいったい何があって悲しみに暮れているのか。目に入ってしまったらたしかめたくなってしまうのが人の性。が、アカウントや周辺人物を遡っても理由が一向に書いていない。ムカつく……。いや、勝手に興味を持ったこちらが悪いのですが、やっぱり「情報」が垂れ流されたからには、その意味を掘りたくなってしまう。これはもう仕方ない。インターネットに悲しさを流してしまったなら、必ず原因を書こう! 受け手は納得したいのだ。ただ、この人が泣いている理由を知りたくて知りたくて疼いている。別に知ったところで助ける気なんてさらさら無い。でも、知りたいだろっ……! 気になってモヤモヤするだろっ……!


 とは言え、だいたいの悲しみって、大半が人間関係か自業自得であるわけで、それを書いてしまうともっと厄介なことになるから、自分の中で飲み込むしかない。今夜だって、僕が落ち込んでいる理由は完璧な自業自得であり、ざっくり言えば自分がのんびりしていたせいであるイベントに間に合わなかったのですね。こういうとき、人間は弱いから一瞬他人のせいにしてダメージを抑えようとします。「あいつがリマインドしなかったからだ!」「こいつが仕事を振って忙しくしたから!」など。言いがかりです。あっいま脳内で八つ当たりしているなと気づいて、自責の念で余計にへこむ。今、その状態です。


 悲しみの連鎖だ。悲しいけれど悲しみの原因を話すことはできない。他人を不快にさせないために落ち込んでいることも表明できない。すべてを自分だけで解決と納得する必要があり、それがストレスとなってさらにつらくなる。次第にループして悲しみが振り出しに戻る。無限にストレスが溜まっていく。


 この、「本当に悲しいことは他人に話せない」っていうのが厄介だ。いや、正確には話すことは可能かもしれないが、こんなこと言ったって意味もないし、自分の評価が下がるだけ……みたいな塩梅あるじゃないですか。笑い話にも昇華できないライン。あれがつらいんだよな。話したところで、「こいつ甘えてんな」くらいにしかならない、しょうもなさすぎる悩み。


 ただ、今回は唯一の成功例かもしれません。なぜなら、今の気持ちをこうして言語化するだけで連載一回分の文章量が埋まったのだから。もちろん、へこんでいる理由は原稿一回分なんて比ではなく、なんなら原稿料何倍分もの損とも言えるのですが。気になるでしょう。言わないぜ。全部が笑えないくらい自分のミスでしかないから。他人に迷惑をかけなかったことだけが救いか。(良い子ぶっているわけでなく、単純に他人に迷惑をかけるミスは厄介さが段違いだから)


 こうやって、他人に言えない悩みを抱えながら生きていくことこそ、大人になるってことなのか? みんないろんな悩みと悲しみを隠し持っているものじゃないか? わりと、恋人や友人に話してみるものなのか? これ僕の自閉症部分の症状か? 幼い自分にはまだ判断つかない……。理由を書いていないのだから、読者も周辺人物も、誰も僕を慰めることすらできない。欠けた心の傷を癒やしてくれるのは、一回分の原稿料だけなのであった。

【でっかいさくらちゃんのフィギュア】


めちゃくちゃでっかいさくらちゃんのフィギュア。このスケールだけあって現在の価格もどデカいのですが、当時はあまりの大きさゆえに在庫があまって半額で購入できた。いまやプレミア化が進み当初の販売価格以上に値段も大きくなっている。フィギュアは欲しいと思った瞬間に買おうね。貯金がヤバくたって、絶対だいじょうぶだよ!

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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