第15回/「みんなの反応」的な動画が苦手

文字数 2,044文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


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最近、Youtubeに「みんなの反応」的な動画が増えてきました。だいたい、アニメや漫画の最新話についての感想がまとめられています。単刀直入に言って、僕はアレがめちゃくちゃ苦手なんですよね。


要は、なんらかの作品についての感想を、刺激が強い順に並べていく動画であるわけじゃないですか。わかりやすくウケやすいワードとか入れて、Twitterや匿名掲示板で集めた感想の最大公約数を見つけて抽象化している。視聴者側は、たくさん流れてくる抽象化された感想を受けて、自身の感想も抽象的に引っ張られてしまう……のでは無いかと危惧しております。


人間の思考ってけっして一枚岩ではないので、「好きだけどここは嫌い」または真逆の場合ってあるじゃないですか。他にも、ちょっとした仕草やセリフが印象に残ったり。「全体としては退屈だったけど、この演出は光るものあったな……」と感じることも少なくないわけで、しかし、感想まとめでわかりやすさが優先された意見だけ参照していると、そういった感性の機微が潰されてしまう。


「誰(どのような人間)の感想か」って部分が重要であると思うんですよ。信頼できる知人、アカウントを遡ればだいたいのパーソナリティは読み取れるTwitterなどで見た感想であれば、「この人はこういう感想を持つんだな」とわかる。それに、自身の意見であると明確なので、どのような投稿であれども責任が生じている。


が、不特定多数で誰ともわからない意見の嵐は、自分の思考にまで影響するかもしれない。「この作品に対しての感想は、このワードを言っておけば共感されて乗り切れる」といった学習をしてしまう。このシーンの演出がよく褒められているから、自分も「ここいいよね……」と言っておこうみたいな。特定のアニメのタイトルを見たら、反射で「作画崩壊」とか「クソアニメ」と言えば良い……と覚える可能性があるわけです。定形で会話するようになっちゃうんですよね。ネットに自意識が呑まれてしまうと。


そういう時期は誰にでもあるでしょう。インターネットには、便利でおもしろいスラングがごまんとありますから、困ったらそれらを使ったり、改変して発言していれば、ネットの波に乗っている感覚を得られますから。配信者へのコメントなどは定形で埋まりがちです。それはそれで一体感が小気味よく、主役である配信者に対して個性のないモブであるために理に適っている。が、配信外でも定形だけを言う機械になってしまうと、だんだん「自分の感想」がネットの大多数と混じってわからなくなる。


知人に、「自分の感想」を投稿することを極度に恐れているタイプが数名居ます。いつ誰に発見されて叩かれるかわからない世界ですので、それも賢い選択肢であると思いますが。彼は、自身の感想が浮かないために、己の感想を書く前にネットで感想や考察を漁り、そこから大きく外れていないかチェックしておくらしい。こういう人は珍しくはないかもしれません。みんながみんな、読書感想文が得意なわけではありませんから。


僕は、他者の感性が大好きです。「この人は、この作品を見てこう感じたんだ!」といった発見がある瞬間がたまらない。


こんなに情報が溢れ続けていくネット社会ですから、気を緩めてネットサーフィンしていると、どんどん「ネットの大多数の意見」が自我へと流れ込んできます。それが、とてももったいない。何かに対してのみんなの意見を見て盛り上がりたい気持ちはわかる。しかし、一旦自分がどう思ったか、なにを考えたかは整理してから臨むといいと思う。僕の友人は、何度も同じ作品を繰り返し、完全に自身の感想と考察が固まってからじゃないと、ネットで感想を漁らない人がいる。好きなものに対して得た感情に、一片たりとも他者の思考を混ぜたくないのですね。本来、こうあるべきではあります。


楽しみ方なんて人それぞれなんで、今回はただの老害的な意見ですけどね。でも、この残酷な世界で生きていくための大事な自我を忘れないでいて欲しい、自分もそうあるべきだと、それだけはつねに願っております。

騎士ガンダム(リアルタイプVer)


SDガンダムをリアル等身にしたという、ぱっと見では本末転倒なアクションフィギュア。しかし、「リアル等身ではファンタジーすぎて浮くデザインの違和感を消すためのデフォルメ」としてのSDなので、それをリアル等身にすることで「本来ならありえないデザインのガンダム」を見せることができるのですね。この騎士ガンダム(リアルタイプVer)がそのままシリアスなガンダム作品に登場すると浮いてしまうが、「SDを等身大にした」前提があるおかげで納得ができる。なんで僕はいま真面目に解説したのでしょう?

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

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