『ドライバーマイルズ』/ジョン・バーニンガム
文字数 1,700文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第48回目は、ジョン・バーニンガム著の『ドライバーマイルズ』です!
犬と暮らしていて幸せに思う瞬間は数限りなくあります。
季節を感じながら散歩しているとき、平和そのものの寝顔につられて一緒に眠ってしまったとき、私と連れ合いが楽しそうに話していると「なあに?」という顔をして寄ってくるさまを見たとき等々。
そんなふうに日々繰り返される小さな幸福の中に「犬とドライブ」があります。うちの犬は車酔いをするタイプでしたが、短い距離からコツコツと訓練し、今ではすっかり大丈夫になりました。
東京からほどよい距離の伊豆は犬連れ旅を推奨してくれており、犬連れOKのホテルやレストランがふんだんに。遠出すると非日常にはしゃぐ姿が見られ、我々人間の幸福度も爆上がりです。
猫や鳥やウサギやそのほか沢山の動物たちが人間と暮らしてくれているけれど、ドライブを共に楽しむという点においては最初に犬が思い浮かんでしまいます。
というわけで、今回紹介する本はドライブが大好きな犬のお話。英国の人気絵本作家ジョン・バーニンガム作『ドライバーマイルズ』(BL出版)です。翻訳は名高い詩人の谷川俊太郎氏。最高のカップリングではないでしょうか。
「マイルズは、とても やっかいな いぬ。
よばれても こない。
さんぽが きらい。
ドッグフードが きらい。
あめも きらい。
うるさく ほえるし、
ほかの いぬを いやがる。」
多くの皆さまが犬に対し、陽気で誰にでもしっぽを振るイメージを持っていると思いますが、実際のところ「やっかいな犬」に会う機会は多いです(このブックガイドで前回取り上げたテーマがまさにそれなので、是非ご一読を)。
本編が始まる前のページには1枚の写真が。本物のマイルズでした。実在する犬とわかり、益々「バーニンガムさんは大変だったんだろうな」と。
でも物語を読み進めると大変さもなんのその、マイルズを大切に思う気持ちが伝わってきて微笑ましくなります。
「マイルズが ほんとに すきなのは、
くるまで でかけて おかのうえの カフェに いくこと。」
きっと何度も本物のマイルズを連れてドライブされたのでしょう。素朴なペンタッチで描かれるマイルズの表情豊かなこと。風景描写が美しく、自分も英国に行ったような気持ちに。
ですが、これは犬とドライブする物語ではありません。犬「が」ドライブする物語です。途中まで完全に普通の犬だと思って読んでいたから、その超展開にびっくり。
ラストページの余韻が最高すぎて。期待しかない終わりかた、必ず次作を手に取ることうけあいです。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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★国樹さんちの愛犬がLINEスタンプになりました!
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柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/10歳/自由に生きるおてんば姫」
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