第52回/情報のかけら

文字数 1,946文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 ここ数ヶ月、ちゃんとジムに通って筋トレをしているので常に筋肉痛。やむを得ないのでマッサージに行きたい!


 ……が、いかんせん僕は夜行性なので、なかなかマッサージ店へ行くのが難しい。だいたいのマッサージ店へ21時くらいに閉まるものの、僕が活発に動くのは0時以降なのです。


 ネットで近場のマッサージ店を調べてみれば1.2軒深夜営業もあるかもしれないと検索してみる。あった。タイ式マッサージ店が深夜3時まで営業中とのこと。よかった。早速、足を運んでみよう! と思いつつも、まずは店名でもググってみる。石橋を叩いて渡るのだ。


 すると、僅かに店舗レビュー記事が見つかる。10年くらい前の個人ブログ。もしや、と思いつつも開いてみると、やっぱりそうだ! 記事内に記載されたマッサージ要素は2.3行のみで、あとは全てタイ人の店主から受けたえっちなサービスに関することである。深夜まで営業しているのは、そっちのサービスが本業であるからです。


 別に、そういうお店を敬遠するつもりは一切ない。全然街にあったって気にしない。けれども、今の僕は至極真っ当に健全なマッサージを望んでいるので、単純にそういうサービスに移行されると困るのだ。股間がカチカチなことよりも、本当の意味でカチカチな身体をどうにかして欲しい。エロ漫画展開と真逆なのですね。


 で、ブログの方では「店主は50代でふくよかなので正直再訪は無い」と書いてあった。じゃあ10年経った今では、件の店主は60代となる。うーん、例ええっちなマッサージ屋さんへ行きたがっているとして、ここでマニアックな店舗を選ぶほど探究心もない。ただただ、健全なマッサージを真っ当に受けたいだけで、間違っても60代のタイ人に際どい鼠蹊部を触ってもらいたい欲は断固としてない。


 一応、読み進めてみると、ブログ主は「再訪はしないが、これはこれで味がある。店主は優しく明るい方でタイ式のマッサージ店らしい味は確実にあるので誤解なきよう」と締める。まさかの擁護だ。


 たしかに言わんとしていることは通じる。異国からやってきた女性たちが日本でマッサージ屋を開き、際どい営業でちょっぴり多めにお金をもらう。客側も若くて日本人の居るお店は高くて……という方が少なくないだろうし、同じ国の若いお姉さん相手では無いからこその、ゆったりとしたコミュニケーションも想像できる。その上で股間をスッキリしたい欲も解消されるのだから、ハマる人にとっては一石二鳥。そういったニーズにこのお店は応えているのでしょう。


 ……もちろん、僕はいまそれを求めていないので見送ったものの、このSNSの時代で、久々に個人ブログによる情報の発信が見られたことに嬉しくなってしまった。これは僕がネットに求めている「情報のカケラ」そのものだ。誰に需要があるかわからない専門知識・体験記がぽつんとインターネットの海に浮かび、こうして偶然拾い上げた僕の頭へそっと刻まれる。


 「情報のカケラ」はランダム性が強く、それが活かされる可能性は極めて低い。が、時折なんらかの奇跡によって点と点が繋がり、めちゃくちゃ有益な情報へ化けたりする。これが好きなんだ。いかにも「この話は役立ちます!」「こういった情報をまとめました!」みたいな感じでなく、そっと個人が置いていくような、きっと誰かに届くと信じてメッセージボトルを放流するような、この感覚だ好きなのだ。PS版lainの好きなところがこれだ!


 といったことがあり、筋肉痛は一切治っていないものの、おかげで久々に「情報のカケラ」を拾ったな〜と暖かい気持ちになれた。実際、この個人ブログのレビューがなければ、若干わかりつつもタイ式マッサージ店で60代店主から股間を触られて居たかもしれない。まあ、それはそれで体験としてアリかもしれませんけど。偶然にもこの謎の情報は誰かの役に立ったのだ。投稿主だって、数年後にこんな形で誰かを手助けするなんて想像だにしていないでしょう。これがね、こういうのが稀にあるから人生は面白い。改めてそう感じさせられる、寒い冬の一幕であった。

【SEGAのUFOキャッチャー型ポーチ】


中にフィギュアなどをいれるとあら不思議。家のグッズがUFOキャッチャーのプライズ品に早変わり。

ちょうどねんどろいどが入るサイズでかわいらしい。

現代でこの懐かし筐体がどれくらい残っているのやら。もうゲームセンターの奥からソニックのBGMが鳴り響く様子も見なくなってきましたね。

来週も月曜深夜に更新予定です。おやすみなさい。

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