第18回/キミは締め切りをちゃんと守れる人になれるか?

文字数 1,686文字

こちらはインターネットに生息するふしぎないきもの・にゃるらがインターネットと独り暮らしとそれ以外について深夜に執筆している画像付きエッセイです。→@nyalra


第1回はこちらから

 よく「締め切りを守れないんですけど、どうすればいいですか?」とフォロワーから質問されます。わかる。いっぱい努力して、頑張って、自分が憧れた夢の先のために一生懸命に走っていく覚悟がある。あるけれど……それはそれとして締め切りは守れない! もしかしたら自分はやる気が足りないのか!? 世の人間たちは、もっともっとスケジュール管理に厳しいのか!? 時間が経過するたびに不安が募っていく……。


 が、安心してください。いや、こんなことで安心してはいけないんだけれども。僕も僕の周辺の作家たちも、みーんな締め切りに対して必死です。もちろん、できる限りは期日を厳守してプロとしての責任を果たしたいけれど、やっぱり締め切りギリギリにならないと手が動かない。これはもう世の9割の人間がそうではないか。人間、締め切りに余裕がある状態でやる気に溢れるほど強くはない。


 これは逃げではない。むしろ、「学び」だ。たとえ締め切りがまだ一ヶ月あるから、それまで少しずつ原稿を進めておけばまったく問題のない仕事があったとしよう。が、それでも三週間は動かないであろう。頭の片隅に原稿のことを意識し、なにを書こうかうっすら脳内にイメージしているかもしれないが、それでも手を動かし始めるのは締め切りが残り数日になってから。僕のような人格の持ち主は絶対にこうなる。何度、「今回は少しずつ進めて余裕を持とう!」なんて反省しても、結局ギリギリになる。


 しかも、いつまでも「全盛期の執筆速度」を過信している。前は徹夜すればできたから……と油断、慢心をしてしまい、ヒトは年々体力が落ちていることを考慮しない。それは若い頃の情熱があったからできたんだ。今となっては、睡眠時間が削れるに連れダイレクトにパフォーマンスも落ちる。残念ながら、なにもしなくとも体力が有り余った20代前半は過ぎ去った。悲しい。


 そんなわけで、僕はもう自分が締め切りに余裕を持てるような人間だと信じるような甘さは無い。なので、クライアントとの交渉で勝負する。このようなコラム連載などでは、開始前からたくさんストックを作っておいたり、「早めの締切を書いて騙してください」と本当はまだ全然余裕のある納品日でお願いしたりする。ごめんなさい! でも、どうしてもストレートに原稿提出なんてできないんです……。


 こんな無茶が通るのも、どうにか納品物の品質や話題性が保たれている成果があるからですが、ここはまだ僅かに残った「若さ」のおかげでしかない。それは日に日に擦り減っていくものだから、自分の落ちていく価値を自覚する必要があります。


 これで「締め切りも守れないのになんの実力もないゴミ」に成り下がったなら自然に仕事が減っていくこと必至。いつか「自分の商品価値<怠惰な心」と逆転してしまう日がきたら完全に終わる。才能の枯渇が認められなくて「最近の出版社は?」と責任転嫁するような男と化すかもしれない。そんな見苦しい中年には、なりたくないよね。


 そんな憐れな末路を迎えないよう、とにかく自分なりに精一杯書いていくしかない。この原稿も、日曜夜が締め切りであるのに、月曜の朝に提出している。「どうせ編集さんが起きるのは昼からなんだから、提出日の翌朝まではセーフだよね!」という、作家あるあるの言い訳をしながら。これをやると、どんどん提出タイミングがズレていくぞ! 反省しろ! ごめんなさい。次は、夜に間に合わせます……。

【ヘドラのソフビ】


化学工場の数ほどあるヘドラのソフビの中でも、特にお気に入りの迫力。やっぱり怪獣ソフビはシンプルにデカいと良い! カラーは、このオリジナルのカラフルと原作に近い黒がありまして、どちらにしようか悩みに悩んでこちらにしました。このドギツいサイケデリックな色の一つ一つに、人間への恨みが込められている。

来週も月曜深夜に更新予定です。それでは、おやすみなさい。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色