『ころわんと しろい くも』/作・間所ひさこ、絵・黒井健
文字数 1,751文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第51回目は、作・間所ひさこさん、絵・黒井健さんの『ころわんと しろい くも』です!
人生で何度も引っ越しをしました。今現在暮らすのは終の住処と決めた我が家。好きなものだけに囲まれ、楽しく日々を過ごしています。
夫婦揃って本が大好きですから、かつては読みたい本をのべつまくなし買っていました。連れ合いは昭和初期の探偵小説コレクターでもありましたので、触ると崩壊しそうな本も沢山。
大量に本があると当然ですが、ほぼ積ん読となります。ゆっくり読むのは歳を重ねて引退してからだねと、いわゆる老後の楽しみを言い訳に更に本は増えました。
そんなある日、私よりも歳上の連れ合いが気付きます。「老眼が進んで、古書の文字を読むのがとても辛い」と。紙の本を愛しているけれど、ついに電子書籍を購入。「読める読める。小さな文字は拡大すればいいんだよ」
最後の引っ越しを機に我が家の蔵書整理が始まりました。絶対に紙で残しておきたいもの、電書で読みたいもの、思い切ってさようならするもの。
その選別を乗り越えた紙の本の中に、絵本があります。黒井健さんは国樹が尊敬する絵本作家さんの1人で、優しいタッチで抒情的に描かれる世界に魅了されました。
有名な新美南吉作『手ぶくろを買いに』(偕成社)は、黒井さんの絵以外では考えられないくらい大好きです。狐の子どもの愛くるしさときたら。
そして宮沢賢治の詩に黒井さんが絵を描かれた『イーハトヴ詩画集 雲の信号』(偕成社)の美しさ。空も木々の緑も写真で撮られた風景より「空で緑」なんです。四季折々を切り取った画面の中では風が吹き、雲が流れ、しんしんと雪が降るのです。
とはいえ残念なことに両方とも犬は出てきませんので、今回はこちらをご紹介。間所ひさこさん作、黒井健さん絵の『ころわんと しろい くも』(ひさかたチャイルド)です。
「わん、わん、おかあさん、
あの くも、おさかなみたい!」
「おさかな すきなの、
だれかなあ。
(中略)ねこちゃんだ。」
素直で可愛いころわんは雲が魚に見えることをねこちゃんに教えてあげようと、町中をかけまわってねこちゃんを探します。大人の私は「雲って形をすぐに変えるけれど、大丈夫なのかな」と思いましたが、はたして。
黒井さんの描く空が沢山出てくる絵本です。生き生きとしたころわん、お友だちのちょろわん、そしてねこちゃん。全部がとても愛おしく。
五月病でお疲れの方々へ。あたたかな物語と空の青に癒されていただけたら嬉しく思います。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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★国樹さんちの愛犬がLINEスタンプになりました!
[MIX犬のきんとき&かんな]
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「地元のイタリアンレストランにて。犬連れOKな日があるので、柑奈ちゃんと一緒にディナーです。ずっといい子にしていたので、沢山ほめました」(国樹)
柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/10歳/自由に生きるおてんば姫」