『1,2,3』/ウィリアム・ウェグマン
文字数 1,752文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第50回目は、ウィリアム・ウェグマンの『1,2,3』です!
犬に服を着せるのは今や普通のことになりましたね。かつては「自然に逆らっている」「犬は望んでいないのに、かわいそう」などというご意見もあったのを覚えています。それこそ犬にレインコートを着せて歩いていたら「甘やかしている」と言われたことさえありました。
実際に犬と暮らすと、人それぞれと同じように犬それぞれだと強く思います。例えば我が家の柑奈ちゃん(茶色の短毛でスリムな女の子)は大変な寒がりで、真冬以外でも服を着たがります。当然雨で濡れるのは大嫌い。雨模様だと散歩の時間でもソファーから立ちあがろうとはしませんが、レインコートを見せるとしぶしぶ玄関に向かいます。
という現代の犬事情なので、ゆううつな雨の日でもレインコートを着せられた犬たちとすれ違うのは楽しいですね。犬のタイプごとに個性的な着こなしをしているのがたまりません。
バセットハウンドは大きなお耳が濡れないよう、すっぽりとフードをかぶせられているし。コーギーは低い体高でお腹が濡れやすいから、泥よけ付きのウェアだったりします。
そんな日々にふと思いました。私が最初に犬が服を着ているのを見たのはどこでだったかなと。道で? いやいや違う。本だ、と。
アメリカの著名な写真家であり美術家であるウィリアム・ウェグマンが撮った摩訶不思議な犬の写真集。遥か昔に出会った本だけれど忘れられず、気が付けば何冊も所有していました。
ウェグマン氏はワイマラナーという犬種にただならぬ愛着があった様子。短毛で垂れ耳、グレーの毛色が美しいドイツの猟犬です。
ご自身が共に暮らすワイマラナーたちに服を着せる、と言うより「顔だけが犬の、犬人間」に見えるように撮っている写真が最高なのです。
中でも国樹イチオシなのが『1,2,3』(HYPERION)です。洋書ですが全く問題ありません。言葉はいっさい使わずに、子どもが楽しく数の概念を学べる絵本仕様になっています。
愛犬であるワイマラナーたちに大活躍してもらい、数字の1から10までを人文字ならぬ犬文字で表現。それだけで十分ワクワクするのに、メインディッシュは別にあります。1なら1匹、2なら2匹というふうに犬が増えていき、シチュエーションは都度変化を。それにより単なる犬写真ではないアーティスティックな世界が展開しているのでした。
出演している犬たちがウェグマン氏のことを大好きなのは間違いありません。その瞳はカメラを構える「我が主人(あるじ)」を見つめています。
美麗で愉快で不思議なウィリアム・ウェグマンの世界、万人におすすめいたします。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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柑奈(かんな)
茶色のMIX犬/10歳/自由に生きるおてんば姫」
「じんだいじで、おさんぽしたの」