『あなたのイヌがわかる本』/ブルース・フォーグル ・著
文字数 2,051文字
イラスト/国樹由香
二匹の保護犬と暮らす、漫画家の国樹由香さんが、そのあふれんばかりのわんこ愛をそそぎ、紡いでくださる大好評連載「いつも犬(きみ)がいた」。
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださる大好評連載の第28回目は、ブルース・フォーグルさんの『あなたのイヌがわかる本―飼い主のためのイヌの動物行動学』です!
コロナ禍の影響で、犬と暮らす選択をされるかたが増えていると聞きました(猫や鳥や他の動物ももちろんですが、この連載においては犬にしぼって書かせていただきます)。
人間同士で自由に会えない期間が長引き寂しさがつのるなか、多くの皆さまがそんな気持ちになるのは自然の摂理かと。犬は私たち人間の暮らしに、安らぎと彩りを与えてくれる存在ですから。
ところが不慣れな犬との暮らしに混乱し、中には手放されてしまうケースも多いとか。それはあまりに悲しく、残念なこと。
ゆるゆるとコロナ前の生活に戻りつつある今だからこそ、かけがえのない家族の一員であると再認識したうえで、言葉の通じない彼らについて学び、その生態をよく知ることが大切なのではと改めて思った次第です。
昔話ですが、国樹が結婚してほどない頃に雑種の保護犬を引き取ることになりました。大きさは柴犬くらいで色は黒。小太郎(通称こた)と名付け、ウキウキの「犬のいる生活」が始まるかと思いきや。
こたはすでに成犬で、性格はつかみどころがなく、捨て犬だったせいか人間に対しても冷めきっていたのです。「全然甘えてくれない。想像と違う!」と何度思ったことか。
接し方に悩んでいた頃出会ったのがブルース・フォーグル博士著の『あなたのイヌがわかる本』(ダイヤモンド社)でした。動物病院に置いてあることが多いので、動物と暮らす皆さまはご存知かも。
ふんだんに使われている写真が素晴らしく、全ページ見応えがあります。
でも、写真として映えているものばかりではありません。犬の様々な生態が一目で伝わるリアルなショットが満載です。普通の写真集ならお蔵入りしそうなものも。吠えたり甘えたりしゅんとしたり。くるくる変わる表情を見ているだけで楽しくなります。
そんな写真の横には文章が添えてあります。博士が詳細に犬の生態に言及しているけれど、読みづらい学術書ふうになっていないのが嬉しい点。
例えば「ジャンプ」という項目があります。見開きページを使い、犬がジャンプする分解写真を載せており、1枚ずつに丁寧な解説が。あんなにもすごいジャンプが可能な理由を、この見開きだけでたちどころに理解出来るのです。
文章は完全に大人向けとはいえ、魅力的な写真を見せながら、子どもたちに噛み砕いて読み聞かせするのもいいかもしれません。
「家族の一員として」という章では、犬がどうして我々人間と生活を共に出来るのか、そして私たちは犬に対してどう向き合えばいいのかを、大変わかりやすく教えてくれます。
我が家の初代犬こたとの生活を助けてくれたのも、まさにこの章で取り上げてくれた「幸福なイヌ」という項目でした。
「イヌたちが幸福なのは、喜んで興奮しているときばかりではない。満足とくつろぎも、彼らに喜びをもたらす。」
常にクールな態度を貫いていた、こた。しっぽもほぼ振りません。でも、ソファーで全身をくつろがせ眠る姿を見て「ああ、静かに満足しているんだな」と思え、気が楽になりました。
「イヌは心の底から安寧を求める社会的な動物であり、「群れ」といっしょのときがいちばん楽しい。」
人間と犬で種族は違えど、ひとつ屋根の下では「群れ」ですから。幸福の形がそこにあります。
犬との暮らしが長い私も表紙が擦り切れるほど読み返しているこちら。人間のために、何より愛する犬たちのために、心からおすすめいたします。
人間同士で自由に会えない期間が長引き寂しさがつのるなか、多くの皆さまがそんな気持ちになるのは自然の摂理かと。犬は私たち人間の暮らしに、安らぎと彩りを与えてくれる存在ですから。
ところが不慣れな犬との暮らしに混乱し、中には手放されてしまうケースも多いとか。それはあまりに悲しく、残念なこと。
ゆるゆるとコロナ前の生活に戻りつつある今だからこそ、かけがえのない家族の一員であると再認識したうえで、言葉の通じない彼らについて学び、その生態をよく知ることが大切なのではと改めて思った次第です。
昔話ですが、国樹が結婚してほどない頃に雑種の保護犬を引き取ることになりました。大きさは柴犬くらいで色は黒。小太郎(通称こた)と名付け、ウキウキの「犬のいる生活」が始まるかと思いきや。
こたはすでに成犬で、性格はつかみどころがなく、捨て犬だったせいか人間に対しても冷めきっていたのです。「全然甘えてくれない。想像と違う!」と何度思ったことか。
接し方に悩んでいた頃出会ったのがブルース・フォーグル博士著の『あなたのイヌがわかる本』(ダイヤモンド社)でした。動物病院に置いてあることが多いので、動物と暮らす皆さまはご存知かも。
ふんだんに使われている写真が素晴らしく、全ページ見応えがあります。
でも、写真として映えているものばかりではありません。犬の様々な生態が一目で伝わるリアルなショットが満載です。普通の写真集ならお蔵入りしそうなものも。吠えたり甘えたりしゅんとしたり。くるくる変わる表情を見ているだけで楽しくなります。
そんな写真の横には文章が添えてあります。博士が詳細に犬の生態に言及しているけれど、読みづらい学術書ふうになっていないのが嬉しい点。
例えば「ジャンプ」という項目があります。見開きページを使い、犬がジャンプする分解写真を載せており、1枚ずつに丁寧な解説が。あんなにもすごいジャンプが可能な理由を、この見開きだけでたちどころに理解出来るのです。
文章は完全に大人向けとはいえ、魅力的な写真を見せながら、子どもたちに噛み砕いて読み聞かせするのもいいかもしれません。
「家族の一員として」という章では、犬がどうして我々人間と生活を共に出来るのか、そして私たちは犬に対してどう向き合えばいいのかを、大変わかりやすく教えてくれます。
我が家の初代犬こたとの生活を助けてくれたのも、まさにこの章で取り上げてくれた「幸福なイヌ」という項目でした。
「イヌたちが幸福なのは、喜んで興奮しているときばかりではない。満足とくつろぎも、彼らに喜びをもたらす。」
常にクールな態度を貫いていた、こた。しっぽもほぼ振りません。でも、ソファーで全身をくつろがせ眠る姿を見て「ああ、静かに満足しているんだな」と思え、気が楽になりました。
「イヌは心の底から安寧を求める社会的な動物であり、「群れ」といっしょのときがいちばん楽しい。」
人間と犬で種族は違えど、ひとつ屋根の下では「群れ」ですから。幸福の形がそこにあります。
犬との暮らしが長い私も表紙が擦り切れるほど読み返しているこちら。人間のために、何より愛する犬たちのために、心からおすすめいたします。
イラスト/国樹由香
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
公式ツイッター→https://twitter.com/kunikikuni
公式インスタグラム→https://www.instagram.com/kunikikuni/
国樹さんちの愛犬たち<特別版>/「我が家の壁に飾っている、歴代犬たちの写真です。あえてのモノクロ。シロは国樹の実家にいた犬でした。私にとって、弟のような犬です。こた、くり、かのは我が子のような犬」by国樹由香
▲ 左上・かの子、右上・くり丸、左下・小太郎、右下・シロ
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