『木曜殺人クラブ』評・三浦天紗子
文字数 1,025文字
本国英国で二〇〇万部のベストセラー
『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン著 羽田詩津子訳(早川書房)
カトリック教会の元敷地に建つ高級リタイアメント・ビレッジ、クーパーズ・チェイス。その住人たち四人が楽しむ趣味サークル「木曜殺人クラブ」は、なんて楽しそうなのだろう。クラブの中核を務めるエリザベスに、日記形式で物語を記録していく元看護師のジョイス、元労働運動家のロン、元精神科医のイブラヒム。メンバーは週1回、クラブ創設メンバーで元警部のペニー・グレイが持ち出してきたファイルに載っている未解決の殺人事件を、ワイン片手に机上で解き明かすのだ。
そんな彼女たちに「現実の殺人事件」を捜査するチャンスが訪れた。施設の共同経営者であるトニー・カランが自宅で撲殺された。正規の捜査情報を手に入れられないエリザベスたちは一案を講じる。以前、施設へ防犯講習会に来た女性巡査のドナを捜査チームに送り込み、間接的に情報共有させるようにしたのだ。かくて趣味サークルは警察捜査と、真相を探り当てるまでのチームとなることに。
エリザベスが最初に疑惑を抱いたのは、トニーの共同経営者イアン・ヴェンサムだ。トニー抜きに新たな開発計画を進められれば、莫大な利益を得られる可能性がある。トニーの死はさらに多くの死と、土地開発をめぐる深く複雑な人間関係やその因果へとつながっていく。
だが、本書の魅力は、謎解きや語りの面白さだけではない。エリザベスたち自身が愛や正義の心を行使して事件に向き合っていることに感動するし、老いは豊かな経験の積み重ねであり人生を少しも損なわせないことを、彼らのような高齢者像を通して証明しているからだ。シリーズ化の期待もかかる極上の英国ミステリー。ああ、クラブの仲間になりたい。