機械()ウサギの発明品()
この
世()界()のあるところに、
大()きすぎもしなければ
小()さすぎもしない、フモールという
町()があって、
多()すぎもしなければ
少()なすぎもしない
人()びとが
暮()らしていた。
フモールの
町()はずれには、
巨()大()なお
豆()腐()のような
窓()のない
建物()があって、
機()械()ウサギのヤン・ストロイという
人()が
住()んでいた。そう、
彼()は
人()だ。
機()械()ではないし、ウサギでもない。なのになぜ
機()械()ウサギかというと、ウサギの
姿()をして
機()械()いじりばかりしているからだった。ヤン・ストロイは
発()明()家()なのだ。
ある
夜()ふけのこと、
彼()は
完成()した
発明品()の
実験()をするために
助手()のマーリクを
呼()んだ。マーリクは
十()三()歳()の
男()の
子()で、まっ
白()な
仮()面()をつけている。
起()きているときも
寝()ているときもだ。でも
不()潔()なのは
苦()手()なので、
顔()を
洗()うときは
仮()面()をはずす。
町()の
人()たちはみんな、ヘンだからやめろと
言()ったが、
機()械()ウサギのヤンだけは、
自()由()な
自()分()自()身()への
第()一()歩()だな! と
言()って、
食()事()のとき
口()のまわりがパカッとひらくように
仮()面()を
改()造()してくれた。
さて、ヤンの
新()しい
発明品()は、
手()のひらサイズのふたつの
人()形()だった。
土()のような
金属()のような
手()ざわりで、ひとつは「あ」の
形()に
口()をひらいていて、もうひとつは「ん」の
形()にとじている。ふたつの
人()形()を
両()手()にもって、「あ」をにぎると
体()が
大()きくなっていき、「ん」をにぎると
小()さくなっていく。
マーリクはまず、「ん」の
人()形()をにぎりしめた。すると
彼()の
体()はシュルシュルと
小()さくなっていった。ヤンが
巨()大()ウサギになり、
実験()テーブルの
脚()が
巨()樹()のようにそびえ、
実験()室()の
床()が
果()てしない
荒()野()のようにひろがってもなお、マーリクは
小()さくなりつづけた。
微()生()物()とおなじサイズになると、
一()瞬()だけ、
彼()らと
話()ができそうな
気()がしたものの、そのままさらに
小()さくなっていき、とうとう
原()子()の
中()へ
落()ちそうになった。
そこで
今()度()は、「あ」の
人()形()をにぎりしめた。
彼()はムクムクと
大()きくなっていき、
微()生()物()をあっという
間()にとおりこし、ヤンがなにか
言()おうとしたときにはもう、
実験()室()の
天()井()をぶちぬいて
巨()大()化()し、フモールの
町()のどの
木()よりも
高()くなり、
頭()が
雲()をつきぬけ、ついにはお
月()さまとおしゃべりできそうなほど
大()きくなったが、
空()気()がうすくて
息()苦()しいものだから、「ん」の
人()形()をにぎりしめた。
マーリクがもとにもどるとヤンは、どのサイズがいちばんよかったかたずねた。するとマーリクは
満足()そうに
言()った。
「このサイズがいちばんだよ!」
オカザキ・ヨシヒサ(
岡崎祥久())
1968
年()、
東()京()生()まれ。
作()家()。「
秒()速()10センチの
越冬()」で
第()40
回()群()像()新()人()文()学()賞()、『
楽()天()屋()』で
第()22
回()野()間()文()芸()新()人()賞()受()賞()。
著書()に『バンビーノ』『
南()へ
下()る
道()』『
首()鳴()り
姫()』『
独()学()魔()法()ノート』『ctの
深()い
川()の
町()』『
文()学()的()なジャーナル』『ファンタズマゴーリア』『ポシーとポパー ふたりは
探偵()』など。
【
近刊()】