〈7月1日〉 柏葉幸子

文字数 2,242文字

魔女(まじょ)のパフェ(とも)


「まだぁ?」
 (わたし)(つく)るいちごパフェをまつ(いもうと)のとこはかわいい。いつもは生意気(なまいき)な五歳児(さいじ)なのに。
「もうすぐだよ。お()ち!」
 ききなれない(こえ)? (だれ)
 テーブルへ()をやった(わたし)は、()(さお)になった。
 とこの(となり)魔女(まじょ)がいた。ほうきのかわりにスプーンをにぎって。
 しわだらけの(かお)、たれさがった(はな)()がつりあがっているというか(こわ)い。
「とこ、こっちきて!」
「どうして?」
 とこは(くび)をかしげた。
「ど、どこから(はい)ってきたの? ドアは(かぎ)かけてるし、ここは十(かい)よ。やだ、本物(ほんもの)? えーっ!」
 とこに()いと()をふりながら、(わたし)はパニックだ。
「ほうきで、(まど)から()たんだよ。とこのパフェ()べるぞ! って気持(きも)ちに魔女(まじょ)のレーダーがピピッと反応(はんのう)したんだよねぇ」
「ああ。ほわほわのわくわくのどきどきのあまあまの、うれしいって気持(きも)ちがこの(いえ)(まど)からにじみだしててさ。あ、いちごパフェだって(わたし)もわかったよ」
 とこと魔女(まじょ)は、ねぇとうなずきあう。
「だ、だからって、他人(たにん)(いえ)勝手(かって)(はい)ってパフェ()べようなんて図々(ずうずう)しい! (だれ)招待(しょうたい)していません!」
「なら、招待(しょうたい)しておくれ、大好物(だいこうぶつ)なんだ」
「うん。ご招待(しょうたい)してあげる」
「とこ!」
「いいでしょ。お(ねえ)ちゃんの(つく)るいちごパフェ、おいしいんだよ。今日(きょう)(とく)におじいちゃんちから(とど)いたいちごを使(つか)うんだよ」
「いいねぇ。ご馳走(ちそう)しておくれよ。(なに)もいいことないしさ。(たの)しいこともないし、(あわ)れな年寄(としより)(やさ)しくしてくれたっていいじゃないか」
(やさ)しくするって――。魔女(まじょ)でしょ」
魔女(まじょ)にだって(なん)にだって、こんな(とき)はまんべんなく(やさ)しくするもんだろ」
「そうだよ。みんなでまんべんなく(たす)けあうんだよねぇ」
 魔女(まじょ)ととこはまたうなずきあう。
 これでは()()かされてしまう。さっさと()べさせて(かえ)ってもらうしかない。
 あわてて(つく)ったいちごパフェを、とこと魔女(まじょ)(わたし)()べる。魔女(まじょ)がいてもおいしいものはおいしい。
 魔女(まじょ)()急速(きゅうそく)にたれさがった。(やさ)しい(かお)になった。
「おいしかった。お(ねえ)ちゃんは(おお)きくなったらいちごパフェ()さんになるんだよ」
毎日(まいにち)(かよ)うよ」
結構(けっこう)です!」
(かよ)うよ。パフェ(とも)じゃないか」
 魔女(まじょ)がにやりと(わら)う。
「パフェ(とも)!」
 とこがうれしそうに(さけ)んだ。
 魔女(まじょ)(まど)からほうきに()って(かえ)っていった。
 こんな(とき)だからまんべんなく(やさ)しくするもんだって、魔女(まじょ)がいった。そうだよなぁと(おも)う。でも、いくらパフェ(とも)だからって、
「ごちそうになりますぅ」
 今日(きょう)、とこのとなりでスプーンをにぎっているのは幽霊(ゆうれい)だ。


柏葉幸子(かしわば・さちこ)
1953(ねん)岩手(いわて)(けん)()まれ。『(きり)のむこうのふしぎな(まち)』で、(だい)15(かい)講談社(こうだんしゃ)児童(じどう)文学(ぶんがく)新人賞(しんじんしょう)日本(にほん)児童(じどう)文学者(ぶんがくしゃ)協会(きょうかい)新人賞(しんじんしょう)受賞(じゅしょう)。『ミラクル・ファミリー』で、(だい)45(かい)産経(さんけい)児童(じどう)出版(しゅっぱん)文化賞(ぶんかしょう)フジテレビ賞受賞(しょうじゅしょう)。『牡丹(ぼたん)さんの不思議(ふしぎ)毎日(まいにち)』で、(だい)54(かい)産経(さんけい)児童(じどう)出版(しゅっぱん)文化賞(ぶんかしょう)受賞(じゅしょう)。『つづきの図書館(としょかん)』で、(だい)59(かい)小学館(しょうがくかん)児童(じどう)出版(しゅっぱん)文化賞(ぶんかしょう)大賞受賞(たいしょうじゅしょう)。『(みさき)のマヨイガ』で、(だい)54(かい)野間(のま)児童(じどう)文芸賞(ぶんげいしょう)受賞(じゅしょう)

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