〈7月2日〉 倉橋燿子
文字数 2,796文字
『夜カフェ』相談室
「毎週 恒例 () の、『夜 () カフェ』オンライン相談 () 室 () の時間 () で~す!」
あたし、黒沢 () 花 () 美 () はスマホに向 () かって声 () をかける。ラジオのパーソナリティー気 () 取 () りだ。
「きょうの相談 () 者 () は誰 () でしょう?」
親友 () の山田 () 星空 () ちゃんが続 () いた。
ティナちゃんとあたしは同 () じ中学 () の二年生 () 。あたしの叔母 () さんが営 () むカフェを借 () りて、みんなで夕 () ごはんを食 () べる場所 () 『夜 () カフェ』をいっしょに開 () いている。親 () が忙 () しくて、一人 () でごはんを食 () べている小学生 () と中学生 () が対象 () だ。
その『夜 () カフェ』では今 () 、オンラインで相談 () 室 () を開催 () 中 () 。自粛 () 中 () 、集 () まれなくなった時 () に始 () めたのがきっかけで、今 () も続 () けている。
「きょうの相談 () 者 () は、中 () 二の櫻 () 井 () 麗 () ちゃんでーす!」
あたしは麗 () ちゃんのスマホの画面 () に向 () かって、手 () をふった。
麗 () ちゃんは目 () が大 () きくて、はっきりした顔 () だちをした大人 () しい女 () の子 () だ。
「あの……、わたし……、友 () だちが、ぜんぜんできないの……」
麗 () ちゃんは、うつむいたままボソボソと言 () う。
「あれま、それじゃ、あたしやハナビと同 () じじゃないの」
ティナちゃんがすかさずコメントした。あたしもすぐに続 () ける。
「そうなの。あたしもティナちゃんも、学校 () では、ずっと一人 () ぼっちだったの」
「えーっ!?」
麗 () ちゃんはまっすぐに画面 () を見 () つめた。目 () を大 () きく見 () 開 () いている。
同 () じ体験 () があると知 () って安心 () したのか、麗 () ちゃんはゆっくりと話 () し出 () した。
「あの、わたし……、中学 () から東京 () に来 () たから、知 () り合 () いはいなくて……。クラスには同 () じ小学校 () から来 () た人 () たちが多 () くて、すぐにグループができちゃって……。部活 () にも入 () りそびれたまま一年生 () が終 () わって、二年生 () になっても休校 () が続 () いて……。ずっと一人 () ぼっち……」
「わかるなあ。すごくわかる……」
あたしは自分 () のことを思 () い浮 () かべて言 () う。
「わたし、学校 () に行 () くのがいやでたまらない……」
「そりゃあ、そう思 () っちゃうよね……」
ティナちゃんがうなずく。あたしも小 () さく息 () をついて言 () う。
「あたしもね、“ぼっち”をやめたいって、思 () い切 () って話 () しかけたりもしてるんだけど、クラスでは、あいかわらず“ぼっち”が続 () いてて……」
「わたしは気 () が合 () わない子 () と、むりして群 () れるくらいなら、“ぼっち”のほうが気楽 () だな」
きっぱりと言 () ったティナちゃんの言葉 () に、麗 () ちゃんが一 () 瞬 () 息 () を呑 () んだのがわかった。
「そんなふうに考 () えてみたこともなかった。わたしは、人 () からどう見 () られてるんだろうって、いつもビクビクしてる。暗 () い子 () だとか、つまんない子 () だとかって思 () われているんじゃないかって、いろいろ考 () えちゃって……。ああ、でも、なんか、ふしぎ。話 () しているうちに、ちょっとだけ心 () が軽 () くなってきちゃった」
「良 () かった-!!」
ティナちゃんとあたしは、同時 () に声 () をあげた。そうなんだ。近 () くに話 () を聞 () いてくれる人 () がいる。それが元気 () の源 () になるんだ。たとえ解決 () 方法 () は見 () つからなくっても。
あたしだって、もしもティナちゃんと出 () 会 () わなかったら、『夜 () カフェ』を作 () らなかったら、今 () もきっと麗 () ちゃんと同 () じ、一人 () ぼっちのままだった。
「ねえ、麗 () ちゃん。居 () 場所 () は学校 () だけじゃないよ。次 () は『夜 () カフェ』で会 () おうね!」
倉橋燿子(くらはし・ようこ)
広島 () 県 () 生 () まれ。上智 () 大学 () 卒業 () 。出版 () 社 () 勤務 () 、フリー編集 () 者 () などを経 () て作家 () デビュー。「風 () を道 () しるべに……」シリーズほかで大 () 人気 () を博 () す。児童 () 書 () のおもな作品 () に、「いちご」「青 () い天使 () 」「月 () が眠 () る家 () 」「パセリ伝説 () 」「魔女 () の診療 () 所 () 」「ドジ魔女 () ヒアリ」「ポレポレ日記 () 」「夜 () カフェ」(以上 () 、いずれもシリーズ作品 () )、『生 () きているだけでいい!~馬 () がおしえてくれたこと~』『小説 () 聲 () の形 () 』(原作 () ・絵 () /大今 () 良時 () )などがある。
【近刊 () 】
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「そうなの。あたしもティナちゃんも、
「えーっ!?」
「あの、わたし……、
「わかるなあ。すごくわかる……」
あたしは
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「そりゃあ、そう
ティナちゃんがうなずく。あたしも
「あたしもね、“ぼっち”をやめたいって、
「わたしは
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「そんなふうに
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ティナちゃんとあたしは、
あたしだって、もしもティナちゃんと
「ねえ、
倉橋燿子(くらはし・ようこ)
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