『猟奇の贄 県警特殊情報管理室・桜庭有彩』/牧野修
文字数 1,825文字
同業のパートナー、喜国雅彦さんとの共著『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』で第17回本格ミステリ大賞受賞をしている国樹さんが、「犬の出てくる面白い本」をネタバレなしで紹介してくださいます!
大好評連載の第55回目は、牧野修さんの『猟奇の贄 県警特殊情報管理室・桜庭有彩』です!
暑い。信じられないくらい暑いです。日本の夏って、こんなに暑いものでしたっけ? 脳が沸騰しそうな熱波、恐ろしすぎます。
海やプールもいいけれど、こんなときは涼しい部屋でゾクゾクする話を読むのが最適解かと。
というわけで、国樹が灼熱の夏におすすめしたい1冊がこちら。牧野修さん作『猟奇の贄 県警特殊情報管理室・桜庭有彩』 (メディアワークス文庫)です。
主人公である
特殊情報管理室では一癖も二癖もあるメンバーが少数先鋭で活動しています。一見冴えない中年男なれど元公安の猛者という
「そこに豪奢な花束が置かれているのかと思った。(中略)彼は、啞然とするほどの美貌の持ち主だった。あまりの美しさに、桜庭は何か不健康で反倫理的なものすら感じていた。」
本庁の刑事課にいたという美しすぎる
既に役者が揃った感ですが、真打ちがいました。
「そこには大きなケージが置かれてあり、その中に真っ黒な犬がいた。狼に似た精悍な顔つきをしている。にもかかわらず、気が弱いのか、ケージの奥にうずくまって桜庭から顔を逸らしている。」
最後のメンバーは甲斐犬まじりの雑種ブンタ。シニガミという
こんな4人と1匹が追いかける事件の恐ろしいこと。首切断あり、カニバリズムあり、凶悪なカルト集団あり、拷問ショーあり。
有彩には特別な能力がありました。人間同士の関係性が「糸」で見える超自然的能力です。不可解な事件に関わる人たちに糸はつきもの。その糸を辿った先には何が?
幼い頃に巻き込まれた猟奇事件のせいで深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられつつも、有彩は果敢に悪に立ち向かうのです。糸と、ブンタの力を借りながら。
美警官と主人公のバディぶりがよく、残酷表現のオンパレードも乗り越えられます。
牧野修さんは和犬がお好きと言われているだけあって、ゴッサム・シティばりに悪がはびこる街でもブンタは無事なのが嬉しい。
こんなにも残虐非道でありながら、読後感が爽やかなのが不思議です。是非。
漫画描き。近年はエッセイも手がけている。ミステリとメタルと空手と犬が大好き。代表作に『こたくんとおひるね』『しばちゃん。』『犬と一緒に乗る舟』など。講談社文庫では、共著の『メフィストの漫画』などがある。2021年、極真空手参段に昇段。メタルDJもこなす。2017年に『本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド』(喜国 雅彦と共著)で第17回本格ミステリ大賞受賞。
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