(59)岩井圭也【富田勢源】

文字数 671文字

現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。

激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!

岩井圭也(いわい・けいや)さん


──1987年生まれ。大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年『永遠についての証明』で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。20年『文身』が「本の雑誌」が選ぶ「2020年上半期エンターテインメント・ベスト10」第8位に選ばれた。

【わたしの好きな戦国武将】


富田勢源

朝倉家に仕えた中条流平法の遣い手。小太刀の達人で佐々木小次郎の師として知られるが、晩年については不詳。眼病を患い、明を失いかけていた状態でも、神道流の剣客との立ち合いに勝利したと伝えられる。津本陽の短編「小太刀勢源」では、その立ち合いの一部始終が描かれている。


極端に低下した視力のなかで得物を振るい、かつ勝利するというのは現実離れした逸話と思われるかもしれない。現代剣道でも一眼二足三胆四力と教えられるように、目の使い方は剣客にとって最重要の能力と言っても過言ではない。それでも富田勢源の逸話に現実味を覚えるのは、剣道経験者として、目や頭が働くより早く相手を打った経験があるからだろうか。常人であれば一生に数度しか経験できない「心眼」を体得した、数少ない人物と言えるかもしれない。


霧に覆われた視界のなかでも小太刀の閃きを見せた富田勢源は、剣道少年だった私にとって、今でもヒーローなのである。

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