(1)米澤穂信【向宣政】

文字数 667文字

現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。

激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!

米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)さん


──1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞奨励賞(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。『満願』および15年発表の『王とサーカス』で三つの年間ミステリ・ランキング史上初の2年連続三冠を達成。

【わたしの好きな戦国武将】


向宣政

南北朝時代に飛驒国司に任ぜられた姉小路家は三家に分かれ、戦国時代にはそのいずれもが衰亡した。三家のひとつ向家は一書によれば家臣の謀叛に遭い、若き当主、後の右近宣政は城を落ち延びたという。かれはどうやら常陸に辿り着き、佐竹家に仕官したらしい。さぞ長く、危険な道中だっただろう。周知のとおり、佐竹は関ヶ原で東軍につかなかった責めを負わされ、秋田に移された。秋田では当主義宣の側近と、先代から仕える旧臣の間で反目があり、その間隙を縫って右近は家老に抜擢されて、横手城代に任ぜられた。右近は、一族から権中納言まで出した姉小路家の裔、一城の主でありながら、家臣に叛かれて雪深い飛驒を追われ、雪のない常陸でひとに仕える身となった。晩年に至って城代という形ではあれど一城を領し、冬の出羽の雪を目の当たりにした時、かれは二度と戻れぬ故郷の雪を思いはしなかっただろうか。好きかどうかはわからないが、興味のある人物である。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色