(13)海堂尊【毛利元就】
文字数 586文字
現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。
激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!
海堂 尊(かいどう・たける)さん
──1961年千葉県生まれ。医師・作家。2006年『チーム・バチスタの栄光』で作家デビュー。著書に『ジェネラル・ルージュの凱旋』『ケルベロスの肖像』など多数。近著に『フィデル出陣 ポーラースター』がある。
【わたしの好きな戦国武将】
毛利元就
戦国武将では毛利元就が好きである。
正確には、「好き」というより「気になる」か。
競合する尼子氏を滅亡させた後、中国地方の覇者となるが、天下を競望せず、勢力拡大せず、覇を争う争いには参加せず、七十五歳の天寿を全うした。
平和主義者で自らを知る知恵者、というイメージだがなんと言っても、「三本の矢」のエピソードが素晴らしい。元就の戦国武将としての戦績は知らずとも、この故事を知らない者はいない。自分の臨終に仲の悪い三人の子を呼び、一本では矢は折れるが、三本合わせれば折れぬ、として兄弟力を合わせ国を守れ、と伝えたという。教訓臭い話だが、それが実は作り話ではないか、と言われているというところが面白い。そうしたエピソードを潜り込ませることを許している、その鷹揚さに強く惹かれる。もっとも毛利元就自身が許したわけではないのだろうが。