(36)梶よう子【石田三成】

文字数 1,025文字

現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。

激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!

梶よう子(かじ・ようこ)さん


──東京都生まれ。2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞大賞受賞。08年「一朝の夢」で第15回松本清張賞を受賞しデビュー。15年『ヨイ豊』が第154回直木賞候補に。同作で第5回歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞。

【わたしの好きな戦国武将】


石田三成

戦国武将と出会うきっかけは、『戦国無双』『戦国BASARA』などのアクション・ゲームだった。


こうした戦国ゲームではキャラクターのビジュアルが重要だが、三成は美形だ。しかも、ただ美しいのではなく、ツンデレ系のクールビューティーだ。残されている肖像画とは似ても似つかない。が、それでも納得してしまうのは、実在の三成が怜悧な武将だったこと、少年時代、寺小姓だったという説があることからかもしれない(寺小姓は美少年が多かったという巷間話)。以来三成にゾッコンになった。


戦国武将らしく三成にも様々な逸話がある。三献の茶や大谷刑部との友情、島左近の登用、処刑の際、身体に悪いからと与えられた柿を拒んだ等々。


三成の刑死後、佐和山城は跡形なく破壊され、その廃材は彦根城に使われたという。見せしめにもほどがある。さらに、いまでこそ人となりが伝わっているが、江戸期には、人望もなく姑息で傲慢で、鼻持ちならない人物とされていた。歴史は勝者が作るというのはまさに真実といえる。


こうした悲劇の武将という立ち位置は、判官贔屓にはたまらない要素だ。さらに、主君豊臣秀吉の恩顧に報いるため義に殉じるという、智将でありながら、たぎる血潮。ギャップ萌えもしてしまう。


だが、なんといっても惹かれるのは三成の旗印「大一大万大吉」である。「ひとりが万民のために、万民がひとりのために尽くせば天下泰平となる」という意味だ。四百年以上も昔に、「ワンフォアオール、オールフォアワン」のようなスローガンを掲げて戦いに臨んでいたのだ。家康の「厭離穢土欣求浄土」は「汚れた世を美しい世へ」(超訳)となるが、あくまでも家康個人の志であって、三成のようにともに歩むという理念がない。佐和山城主として仁政を敷いたという姿が浮かんでくる。クールビューティーな美形でなくても三成は十分魅力的なのである。

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