(72)松尾清貴【秋月種実】

文字数 644文字

現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。

激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!

松尾清貴(まつお・きよたか)さん


──1976年福岡県生まれ。95年、北九州工業高等専門学校中退。97年までニューヨーク在住。2004年『簡単な生活』でデビュー、のち『あやかしの小瓶』と改題して文庫化。近著は『ちえもん』。

【わたしの好きな戦国武将】


秋月種実

乱世の奸雄というが、奸雄あってこそ乱世。筑前秋月を拠点に三十六万石の大名まで上りつめた秋月種実は、九州北部をさんざん搔き乱した。


始まりは落城だった。大友勢に攻められ、長兄はじめ数百人が討死し、父の文種も自害した。幼い種実はわずかな家来に守られ城を脱出、毛利家を頼った。


数年後、毛利家から兵と金を借りて旧領を奪還する。


秋月を守るだけで大変なのに、領地を広げていった。敗れれば、宿敵大友宗麟にも臣従した。生き残れば勝ちと言わんばかりだ。なにしろ機を見て必ず叛く。とにかく独立心が強かった。そして時流をよく読んだ。


だが、それも秀吉の九州征伐まで。種実は島津方についた。読み違え? それとも、秀吉に与すれば、勝っても転封されて秋月領を失うと見たか。


負けた。剃髪して命乞い。楢柴の茶入を献上するのも厭わない。


天下と無縁だった一時代が過ぎ、日向財部三万石へ転封された。すべてを失っても悪人に悲愴は似合わない。

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