(63)佐野広美【細川幽斎】
文字数 638文字
現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。
激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!
佐野広実(さの・ひろみ)さん
──1961年神奈川県生まれ。99年、第6回松本清張賞を「島村匠しま むら しょう」名義で受賞。第65回江戸川乱歩賞最終候補。「わたしが消える」で第66回江戸川乱歩賞受賞、2020年同作が単行本にて刊行された。
【わたしの好きな戦国武将】
細川幽斎
武将というだけではなく、当時の文化人として稀有な存在だろう。
古今伝授の話はあまりにも有名だが、幽斎の死とともに相伝が途絶えることを惜しんだ攻撃軍が籠城する幽斎を攻め落すのをためらったというのは、それだけ文化的な価値に敬意を払った武将がいた証拠でもある。
もっとも、幽斎がおのれの文化的価値を自覚し、関ヶ原直前に兵を釘づけにしておけると計算したのもあり得る話で、文化人と呼ばれる者がいかにその力をふるうかによって右にも左にも事態は揺れ動くいい例ともいえる。だからこそ識者とか文化人という存在はおのれの立場や発言に自覚的でなくてはなるまい。歴史の基盤はどのみち文化なのである。戦乱の世にあってさえその価値を否定しない姿勢はもっと重んじられるべきで、功利主義にこりかたまって文系科目をなくしてしまえなどという暴言を吐く現代の識者の方がよほどバーバリズムであるとしか思えない。