(81)安東能明【松平信康】

文字数 675文字

現代を代表する作家・漫画家・学者・舞台で活躍する芸人やタレントの方たちに、好きな戦国武将のアンケート調査を実施いたしました。

激動の令和において、人気のある武将は果たしてだれなのか?!

安東能明(あんどう・よしあき)さん


──1956年静岡県生まれ。94年『死が舞い降りた』で日本推理サスペンス大賞優秀賞を受賞しデビュー。2000年『鬼子母神』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。10年『撃てない警官』所収の「随監」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。近著『凍える火 第Ⅱ捜査官』。

【わたしの好きな戦国武将】


松平信康

毎年、十一月、私の故郷、浜松市二俣では、信長の命により自刃した徳川家康の嫡男、松平信康の無念をしのんで、「信康武者行列」が行われる。仰々しい甲冑姿の行列を見て育った私にとって、戦国武将といえば信康だった。正史には、信康が、武田方に内通したとする書状を、正室の徳姫が父親の織田信長に送りつけ、それに怒った信長が家康を通じて、切腹を命じた、とある。しかし、この話は何とも信じがたい。二十一歳で果てた信康は、聡明で、長篠の戦いなどで多くの武功を上げていた。その行く末に恐怖を抱いた信長が、切腹を命じたとする向きもあるが、それよりも、当の家康自身が、成長する息子を恐れていたのではあるまいか。父殺しを演じた斎藤道三の息子、義龍のように。家康自身の正室、築山御前を亡き者にしていることから見ても、家康が信長の命を隠れ蓑にして、一門に流れる今川の血を絶やしたかった、と見るのは穿ち過ぎだろうか。

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色