第81回/届くかわからない抗議より「選挙」という正攻法で
文字数 2,342文字
稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!
前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!
お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の旅がつづく。
今日Xを見ていたら、ついに議員の口から、「納税は議員が判断すること」という言葉が出たらしい。
裏金疑惑が浮上してから「4000万まで申告しなくてOK」「明細はすべて『不明』でOK」など、今まで我々が知らなかった様々なルールが公開されたのだが、ついに「納税の義務」という憲法にまで迫って来た。
この発言を受けて、当然国民は「納税は個人の自由らしいので、私もしません」と国民の3大義務が2大になったことに対し、かなりの理解を示している。
こういった不祥事や発言を受けて、真面目に納税するのがバカらしくなってなっている人はたくさんおり、「確定申告ボイコット」という運動も見かけた。
しかし、みんな「議員がしてないんだから、俺も納税やめるわ」と口では言うが、これは「テスト勉強全然してねーわ」と同じであり、おそらく多くの人間が、納税やめるわと言いながら、真面目に確定申告して納税すると思うので、真に受けて本当に確定申告ボイコットするのはやめた方がいい。
確かに今年は、確定申告をバックレたことにより、ガサにきた職員相手に強弁できる時間は最長記録を更新できるだろう。
しかし、最終的に何らかの措置により、未申告の罰則込みの税金を取られるだろう。
そもそも確定申告しなければ、払い過ぎていた場合、所得税も返ってこない。
つまり抗議の意味で確定申告や納税をしないことで、払う必要のない税金まで支払うことになって、余計思うつぼという結果になりかねない。
それだったら、極限まで節税した確定申告書を作った方がまだいいだろう。「あいつが納税してないから俺もしない」という主張は通らないと思うが、「書籍3500万が良くて俺の『日刊SPA!』が経費にならないってのか」という主張は、今年通りやすい気がする。
それに抗議活動をしても、対応するのは疑惑の本人ではなく、何もしていない職員や、最悪ただのバイトだったりする。
そういう届くかわからない抗議の前に実は「選挙」という正攻法があったりするので、今回の件に怒りを感じている方は、ご一考いただければと思う。
私も文句を言いながら、諾々と、しかもスピーディに確定申告を終えてしまった一人である。
皆が納税意欲を失っているから逆に高めてみた、というサブカルクソ野郎にありがちな逆張りをやっているわけではない。
意欲は同様に失っているが、私が失った意欲のままに、確定申告を拒否すると、直近で私の顧問税理士が困るし、意志を貫くために契約解除すれば、相手の収入減になるだけである。
ただでさえ、税理士などの会計事務所は、今年インボイス対応で大変なのだ。
抗議の声を上げるのは大事だし行動するのは素晴らしいが、やり方を間違えると届けたいところに抗議が届かないばかりか、全く関係ない者に流れ弾が被弾するだけなる場合もあるので、やり方だけは慎重に考えなければいけない。
ちなみにやり方に関しては「選挙」という、少なくとも無関係の人間に被弾しない方法があるので参考にしていただければと思う。
ちなみにできるだけ税金を支払わなくて良くする正攻法「節税」に関しては、今年も失敗した。
そろそろ本格的な「領収書捨て病」の治療が望まれる。
ちなみに領収書捨て病の治療は適用外だと思うが、その他の医療費が合計10万円以上になった場合は、医療費控除が可能である。
医療費控除に関しては、健康保険適用外の医療費でも入れてOKな場合もあるので、病院の領収書は捨てずにとっておいた方がいい。
そういう私が一番領収書をとっておけていないのだが、幸い今年はまたしても歯の「インプラント手術」があった。
インプラントは未だに保険適用外であり、非常に高額である。
つまりインプラントの領収1枚だけで「30万」とかになっているので、この1枚さえなくさなければ、医療費控除は受けられるという寸法だ。
ちなみに医療費控除は、会社員でも確定申告をすることで受けられるので、医療費が高額になった場合は、年末調整だけでなく、確定申告もした方がいい。
さらに、医療費控除は、家族合算が可能である、1人では10万いかなくても、元気玉のようにオラにお前らの不健康の証を分けてくれ、といって10万以上になれば申告ができる。
ただ控除は世帯主などの決まりはなく、誰の控除にするかは任意である。
よって、我が家の医療費は、私の控除にするか夫の控除にするかで若干意見が割れた。
「どうせお前は追徴なのだから俺の控除にしよう」という爆弾発言もあったが、結局今年は、インプラントで高額になっている私の方が、夫の医療費込みで申請することとなった。
そして来年以降は「より医療費がかかった方が領収書をゲットする」という取り決めで決着した。
つまり、今年も適度に体を壊して医療費の領収を稼いでいかないと負ける、ということである。
このような「領収書争奪戦」は、フリーランスの間では度々起こる。
大の大人が和民の領収書をかけて、5人ぐらいで円陣を組みジャンケンをするのだ。
国民がこんな涙ぐましい努力をして、1円でも適切な経費を挙げようとしているのに、それを全て「不明」で通す奴がいるというのは、やはり許せぬものがある