第11回 納税への怒りを電力に変換する技術でノーベル憤怒賞を目指します

文字数 2,230文字

稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!


前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!


お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の新たなる旅が始まるーー。

気づけばずっと税金について憤っているコラムになってしまっているが、現在予定納税を払ったと思ったら次の税金の通知が来たところだし、今年最後の税金の支払いが終わるのが11月30日だ。


つまりほぼ一年中税金を払っているようなものなので、年中怒っていて当然である。


だがこれは私だけではなく、みんな買い物をするたびに消費税を支払っているのだ。

ほぼ全国民が年中税金を払っていると言っていいだろう。

これで怒らないのはみんな寛大が過ぎる。ずっと何かに怒り続けているTwitterアカウントを見習って、もっと怒ってもいいのではないだろうか。


もしかしたら、気づかないうちに払っている税金がもっとあるかもしれない。

アンチが揚げ足を取るためだけに、そこらのファン以上に相手のブログやSNSをチェックしているように、税金についてもっと怒るためには税金の勉強が必要である。

やはり怒りというのは大いなる原動力である、太陽光や風力発電をゴリ押しして今回のような電力不足を起こす暇があったら、早く憤怒発電を開発してほしい。


そんなわけで、今更だが税金の種類について調べてみた。


調べてみて思い出したのだが、東日本大震災後、普通の所得税だけではなく「復興特別所得税」というのを払っていたのだ。

その名の通り震災復興財源確保のための税金であり、所得税の2.1%を2013年から2038年の25年間払い続けることになる。

25年と言ったら、赤子がAV界で「熟女」と呼ばれる年齢になるほどの年月であり、あと15年も残っている。

もちろんあの震災の復興には、それだけの時間と金がかかると言われたら何も言えないのだが、万が一あの震災がなくても、別の名目で2.1%分何かが増税されたような気もしなくはない。


また消費税のように、商品代に組み込まれているため支払っていることを意識しにくい税金も意外と種類が多い。

「酒税」「タバコ税」ガソリンなどにかかる「揮発油税」や「軽油税」などである。

正確には、税金を納めるのはタバコ製造業社などなのだが、タバコの値段は税金込みで設定されているので、払っているのは実質我々消費者である。

タバコの値段がどんどん上がっているのは、タバコにかかる税金が上がっているからだ。


つまり「喫煙」というのは高額な税金を納めた上、自ら狭い隔離スペースに収容され、有害とされる煙に燻される、というなかなかのハードプレイということだ。

一箱580円というのは高過ぎるように思えたが、プレイと思えば破格に安い。

専門店であれば一発ビンタしてもらうだけで1000円ぐらいは取られてしまうのではないか。それに対しタバコは一箱20プレイ可能で580円なのだから、タダみたいなものだ。


逆にそこまでハードな目に遭っても吸う必要あるのか?と思わなくもないが、「じゃあ貴様は『ガチャ税』ができたらガチャをやめるのか?」と言われた時点で、このディベートは私の秒殺だ。

多額のガチャ税を課せられ、副流ガチャが迷惑だから、ガチャは便所の個室で回せと言われても回すだろう。タバコもきっとそういうものなのだ。


しかし酒税やタバコ税ぐらいなら知っている人も多いと思う。

ではゴルフをするときは「ゴルフ場使用税」、温泉に入るときは「入湯税」がかかっていることを知っていただろうか? 私はついさっき知った。


入湯税は市町村税らしいのでまだ何となくわからなくもない。

ゴルフ場使用税はどういう理屈なのかというと、ゴルフ場は道路整備や防災など地方公共団体の行政サービスと密接な関係があるため、またゴルフは他のレジャーより費用がかかるので、ゴルフ場利用者は税負担能力が強いから、だそうだ。


「ゴルフやってる奴は金持ち」というのは「メガネかけてるから頭がいい」レベルの暴論な気もしなくはないが、私が知らないだけでゴルフは想像以上に金がかかる趣味なのだろう。


ちなみにガチャもある意味ゴルフ以上に金がかかる趣味だが、ソシャカスに税負担能力があるとは思わないでほしい。

むしろ、払わなければいけない税金でガチャを回してしまうのが俺たちだ。


このように、気づかぬうちに我々はいろんなところで税金を徴収されているのだから、我々ももっと細かく文句を言っていくべきだろう。


そうは言っても納税は国民の義務である。その支払いに文句を言うこと自体間違っているのかもしれない。

だが税金への文句は支払いだけではなく、「適切に使われていない」という怒りとワンセットなのである。


しかし、こちらがそれを知らず利用していないだけで、我々のために適切に使われている税金というのも存在するのかもしれない。


よって次回は税金の使い道について調べてみる予定だ。


そんなの待ちきれないふざけているのかと言う人は、今からその怒りを最寄りの交番にぶつけに行ってみると良い。その場で税金が自分のために適切に使用されるはずである。

カレー沢薫

山口県在住の漫画家・コラムニスト。最新作に『ひとりでしにたい』原作(講談社)など。

Twitterはこちら:@rosia29

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