第12回 生の映画を観ているようなモンだよ(或いは、誤振込の悲劇)

文字数 2,296文字

稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!


前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!


お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の新たなる旅が始まるーー。

納税は国民の義務である、そこに文句をつけるのはおかしい。

だが我々が憤っているのはそこではない、支払った税金が我々のために使われていないような気がするからガタガタ言っているのだ。


しかし「気がする」と言っている通り「俺たちの税金が無駄に使われている」というイメージに怒っているだけ、という可能性もある。

己の脳内で作り出した巨大な敵と戦うリアルシャドーは、むしろ刃牙が我々からパクったと言ってもいいかもしれない。


確かに、具体的に税金が無駄遣いされた例を言えと言われたらすぐには出てこない。


そう言いたかったのだが、我が地方自治体の税金の無駄使いとなると、秒で「4,360万誤振込」と答えられるようになってしまった。


結局全額戻って来たのだから良いではないか、と思うかもしれないが、あの事件の捜査や事後処理に使われた経費人件費ももちろん税金なのである。


だがあの事件は逆の見方もできる。

我が故郷は他の田舎がそうであるように、生殺与奪をイオソに握られているのだが、事件が起こったのはイオソの息すら届かない田舎なのだ。

逆に町民たちはどうやって生活をしているのか心配になってきたが、最近イオソとどちらが我が故郷を植民地にするか争っているツノレハグループは進出しているようなので安心した。

そんな過疎地なので、補助金を出してまで移民を誘致しようとしてはいるが、そう大々的にPRが打てるものではない。


現在、何で宣伝するのが一番効果があるかというと、やはり未だに「テレビ」が一番強いのではないかと思う。

どれだけTwitterでバズっている話題を出してもリアルではキョトンとされるばかりだが、全国のテレビニュースになるような話は知っている人が多い。


テレビはオワコンと言っても、まずそれを言っている奴がネット民であり、確かに若者はテレビよりネットを見てみているかもしれないが、日本は若より老の数の方が遥かに多いのだ。


よってテレビは未だに高い宣伝効果を持ち、数十秒でも全国放送でCMを流そうとしたら莫大な金がかかる。

つまりあの町の話題がテレビに映った総時間を宣伝費に換算すると4360万円ぐらい軽く超えているのではないか。

そういう意味では、我々の税金を金額以上に有益に使ったと言えなくもない。


ちなみに当時「何故よりによってこんな逸材に誤振込みをしたのか」と言われていたが、実は誤振込自体はさほど珍しいことではなく、今までは素直に返してくれたから事件にならなかっただけという説もある。

だが、ガチャだって出るまで回せば出るのだ。誤振込みも誤振込みし続ければいつかは「返さないしカジノに全部使った」と主張するSSRに当たるのだ。


他の誤振込まされた人談によると、返金要請が「さっさと返さないと捕まりますよ」と自分が間違えたくせに高圧的だったという噂もある。

そんな国家権力に屈せず、返さないと言い張れる胆力の持ち主はそうそういない。

某YouTuberもその男気を買って、ついホワイトナイトしてしまったのもわかる。


製作費たったの4360万円でこれだけのドラマを作った監督はすごいし、何より使い道がイマイチ見えてない税金の行方をこれだけ赤裸々にオープンにしてくれたのが偉い。


このように、我々の血税が無駄遣い以前に杜撰な管理をされている疑惑まで生じる嫌な事件だったのだ。


随分壮大な使い方をされてしまったが、元々この4360万円は給付金だったものである。


困窮者やこれから頑張ろうという人間を救済し、支援するのも重要な税金の使い道の一つだ。


日本の支援制度は充実している方らしいのだが、それらの情報が本当に必要な人間に届いていないという問題がある。


確かに、いくらネットで困窮者のための制度があると言ったところで、ガチの困窮者はネット環境など持っていないだろうし、最悪着る服すらなく、役所の前に警察にたどり着いてしまう可能性すらある。


制度を作るだけではなく、それを必要な人間まで届けることにも税金を使わなければいけないということだ。


ということは、私も知らないだけで支援してもらえる制度があるかもしれない、ということだ。

実際持続化給付金などは、漫画家でも条件を満たせば受けることができたようだ。


そんなわけで、県のHPで私が受けられそうな支援や補助がないか調べて見た。

その結果なかったのは仕方がない。だがそれ以前に我が村にはそもそも「フリーランスで働く」という概念がないのではという疑惑が浮上してきた。


リモートワーク設備を導入するための補助金などはある。だがどれも「中小企業」以上が対象なのである。


TM Revolutionが一人でTM Revolutionなように、私も一人で中小企業ということにできないかと思ったが、それは法人にしていないと無理らしい。


このように、今のところ私に使う税金はないようだが、自分も利用できる制度がないか、たまには自治体のHPをチェックするのも大事である。


税金が使われるのを待つ時代は終わった。これからは自ら使いに行く時代である。

カレー沢薫

山口県在住の漫画家・コラムニスト。最新作に『ひとりでしにたい』原作(講談社)など。

Twitterはこちら:@rosai29

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