第72回/ならば非課税である宗教団体を立ち上げるか
文字数 2,255文字
稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!
前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!
お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の旅がつづく。
2023年の漢字は「税」だそうだ。
早速坊主がでかい半紙に「税」と書く姿を見て、我らがXを中心に「これが非課税のお坊はんが書かはった『税』どすか雅でおまんな」という率直な感想が相次いでいた。
坊主自身も今年の漢字は書きたくなかっただろう、私だったら勝手に「猫」と書いていたかもしれない。
しかし、坊主は非課税というだけで、我々に重税を課しているのは坊主ではないし、我々の税金を空費しているのも坊主ではない、そしておそらく坊主も買い物にかかる消費税は払っており、物価高の影響もばっちり受けているはずだ。
国民同士が争って、諸悪の根源である政治に批判が向かないというのは、一番政治家が望むところである。
坊主がでかい半紙に「税」と書くシュールにムカつくのは仕方がないが、そのムカつきを生み出しているのは坊主ではないのである。
しかし、年中何らかの税を支払い、今年インボイスまで課せられた身としては「非課税」がうらやましいのも事実である。
私は日頃から「読者の笑顔と二兆円さえあればあとは何もいらない」と己の無欲さを表明しているが、求める二兆円は当然(非課税)である。二兆円に課税すると言うなら読者の笑顔の方に重税を課してほしい。
前々から宗教は非課税なのは知っていたし、税を逃れるために宗教法人にしてしまうかという冗談もよく言ってきた。
だが世はまさに大税金時代、ギャグではなく真剣に宗教化を考える段階にきているのではないか。
少なくとも知識として宗教法人の立ち上げ方を知っていても損ではないだろう。
余談だが、遅ればせながら最近私も調べものにAIチャットを利用するようになった。たまによどみなく嘘をついてくるので却って
早速AIに宗教法人の作り方を聞いてみたところ、まずは「宗教団体」を作れと言われた。
まるで教室で「三人組を作ってください」と言われたかのような見事な「詰み」である。
宗教の勧誘に対し「自分は西川貴教なんで」と言ったら、そんな宗教あるかと言われたので「人様の宗教をないとはなんだ、体を夏にするぞ!」と激高したら帰っていったというおもしろコピペがある。
確かに西川貴教は存在するが、彼は1人でTMレボリューションなので「宗教団体」ではなく、法人化は難しいと言えるのかもしれない。さっそく勉強になった。
それでも宗教団体を作りたいならまず「宗教の規則」を作らなければいけない、という。
規則とは「豚肉を火を通さず食ってはならない」のような戒律ではなく、宗教団体の概要のようなものである。
まず宗教の名称そして所在地、目的、財産、役員の定数、選出方法、職務権限、任期、会議の開催方法、解散に関する事項などを記載する。
やはり1人では厳しいことばかりだ
ただ社長オレ専務オレ社員オレ、のような彼岸島の声優方式が許されるならまだワンチャンある。
そして規則が出来たら所轄庁へ申請し認証をもらう。
おそらくここが最大の難関だろう。
過去には宗教団体が起こした重大事件もあるし、今年も某宗教団体についての問題が取り沙汰されていた。
もちろん全ての宗教がそのようなことをしているわけではないが、宗教団体に対する警戒はかなり強く、地域住民の反対もあるだろう。
そう簡単に認証してもらえないだろうし、新興宗教であればなおさらだ、実際ここ数年で新たに設立された宗教法人は、数えるほどしかないようだ。
突然「おキャット様原理主義過激派猫を崇めぬ者は地獄の業火に焼かれる教」と名乗って、目的は「非課税」と言っても認証は下りないだろう。
ただ、この名前で宗教を立ち上げれば、加入者はそこそこ集まるような気もしてきた。
そしてもちろん認証されるためには「宗教活動を行っていること」が条件であり、多分宗教活動で得た金銭が非課税になるのだろう。
しかし「宗教上の理由でピーマンは食べられない」と言う人がいるように、活動の全てを後付けで宗教活動と主張することは可能である。
こち亀でも一山当てた両さんが、多額の税金から逃れるために宗教だと主張する話があった。
つまり、私の原稿は全て、宗教の布教活動であり、原稿料はそれに対するお布施であると主張すれば良い。
しかしそれでは私と関係している出版社が「某宗教団体と密接な関係がある」となってしまい、ある意味反社との関わりより不味いので、早急に仕事を干されてしまうだろう。
そもそも非課税と言っても、収入に係る税金が非課税なのだから、宗教活動による収入がなければ全くおいしくもないのである。
そしてこういう邪悪な目的で宗教を口にする輩がいるから、宗教に対する視線がますます厳しくなってしまうのだ。
「税」と書く坊主への視線の温度を下げているのは私自身かもしれない。誠に申し訳ないことをした、風邪には気を付けてほしい。