第31回 我、ツイ廃ゆえ、Twitter Blueに課金せず
文字数 2,485文字
稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!
前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!
お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の新たなる旅が始まるーー。
ついにTwitterに「Twitter Blue」という有料サービスが追加された。
しかし月額980円、iOS版だと1,380円というかなり強気の設定にも関わらず、表示される広告が「半分」になるだけ、さらに自分のつぶやきにリプするたびに、フォロワーのTLのトップに出現するという「世界一ウザい存在になれる機能」により、有料登録したせいでフォロワーが減ったという報告もあり、ユーザーたちは怒りを超えて爆笑、という状態だ。
しかし、自分の進退をTwitterの投票機能で決めてしまうようなイーロンのことだ、別にTwitterで儲ける気はなく「Twitterで遊び倒す」ことを目的にしており、今回の有料機能もワザとで、爆笑する我々をテスラ社の屋上から見下ろしながら爆笑しているような気がするし、このクソ機能に課金する奴が現れるのか社員と賭けているのかもしれない。
このようにTwitterの有料版には今のところ全く入る気が起こらないが、月額料金を払ってサービスを利用するのはもはや当たり前のことになった。
おそらく月1,380円払えば、映画や音楽などかなり見放題聞き放題になるだろう。そこをあえてTwitterに課金するというのは、毎月小銭入れに1,380円余って邪魔、という人以外ありえない。ありえたとしてもコンビニ横の募金箱の方をお勧めする。
だが、長尺の動画が投稿できるようになったりと、ある種の人には有用と言えなくもない機能もあるようなので、一応今後に期待だ。
しかし、このようなサブスクを利用しすぎるのも考え物だ。
特に通いもしないジムの会費だけを支払い続けた経験のある人間は、相当慎重になった方が良い。
そういう人間は一度サブスクに加入してしまうと、利用もしていないのにダラダラと月額を払い続ける可能性が高い。
私も把握できていない謎の引き落としが数件あるが、サブスクも借金と同じで放置しすぎると把握することさえ怖くなってしまうのだ。
把握しているもので言えば、まずアマゾンプライムである。
これに関しては十分元を取れているから良いだろう。極力外に出たくない人間にとってアマゾンはなくてはならない存在である。ピザ屋にすら配達拒否をされる僻地でも、翌日に届けてくれるのでありがたい。
しかしアマゾンプライムに付属したプライムビデオが、実写デビルマンのサブスク配信をやめてしまったことだけはマイナス二兆点である。
だが、我々がサブスクで実写デビルマンを見すぎたせいでサブスクから外された可能性があるため、あまり強くは言えない。
あと、仕事用としてofficeとGmailに課金しているような気がする。
すでにあやふやになってきているが、こうやってWordを利用しているということは多分しているのだろう。
Gmailは無料でも十分使えるのだが、当然のようにメールの整理ができないため現在未読メールが「18841件」ほどあり、すぐメールボックスがいっぱいだと言われて面倒くさいので有料にして容量を増やした。
やはり「雑で面倒くさがりな人間からは不要な金が出ていく」というのは、ここでも共通している。
自分的には永久に会費を払い続けるのが嫌なので、できるだけ買い切りソフトを利用したいと思っているのだが、最近は「サブスクのみ」にしているサービスも増えている。
さらに「支払いはクレカのみ」にされると、社会的信用格差による便利格差が開きすぎてしまい、平等を掲げる憲法に違反してしまうと思うので、せめてデビットカードぐらいは選択肢に入れてほしい。
そして現在、把握していながら完全な死に金になっているのが、ニンテンドーのアカウントである。
ニンテンドーアカウントは月額306円でswitchの通信プレイや様々なコンテンツが利用できるのだが、それ以前にswitchが「行方不明」という物理的問題が発生しているため、利用ができていない。
ならばswitchの遺体が発見されるまで退会すればよいのだが、再度登録しなおすのが面倒なのである。
よって、現在毎月ニンテンドーにただの寄付をしている状態だが、ニンテンドーほど私ごときの寄付がいらない日本企業もないのではないか。
先日、別の仕事で米国の意識高い系雑誌のゲーム特集を見たのだが、その中でもニンテンドーはピックアップされていた。
しかし、意識高い系雑誌のゲーム特集は、ニャオハが立つのか立たないか揉めたりしないのはもちろん、もはやゲーム自体の話もあまりしないのだ。
ニンテンドーを取り上げるなら普通ゲーム開発に関わっている人に注目すると思うが、そこで一番ページを割かれていたのは「ニンテンドー創立者の孫」で、現在ニンテンドーの資産運用を担当している人であった。つまりゲームは作ってない人である。
確かにニンテンドーほどの会社になると「一族全員ゲームを作っている」という状態は逆に困るのだろう。
ニンテンドー創立者の家に生まれたという時点で完全に勝ち確だが、勝ち確の人にありがちな「勝ち確扱いされるのが嫌」精神があり、当初はニンテンドーの孫と言われるのが嫌で違う仕事をしていたこともあるようだ。
金のある家に生まれたことがないのでわからないが、そういう家に生まれた人間にも苦労があるのだろう。
しかし、どうせなら金がない苦労よりはある苦労をしたかった。
しかし、ニンテンドーの人を苦労させている金のうち306円は私の金である。
これからも、恵まれた人間への嫌がらせの意味で毎月306円を課金していきたい。
山口県在住の漫画家・コラムニスト。最新作に『ひとりでしにたい』原作(講談社)など。
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