第90回/少額の買い物にクレカOK? or 気が引ける?

文字数 2,328文字

 稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!


前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!


お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の旅がつづく。

何度目かわからない脱現金生活を心がけているのだが、案の定、今年度の自治会費の支払いで頓挫した。


しかし、集金に来た班長に対し「クレカか電子マネーは対応していないんですか?」と聞くことにより失われる社会的信用の方が、キャッシュレス決済によって得られるポイントより遥かに巨額なのである。


金は財だが、金だけが財と思うと、それ以上の損失を被ることになるのだ。


よって町内会費はノーカンだが、先日東京に行ったとき、思いがけず多くの現金を使ってしまった。


どう考えても、我が村より東京の方がキャッシュレス決済対応店が多いのは明白であり、特に外国人も多く利用するであろう空港内の施設が、現金のみ対応とは考えにくい。


逆に「頑固一徹」という日本人の気質と、ペーパレスが遅れている日本文化を肌で感じてもらいたくて、現金のみ対応をしている店もあるかもしれないが、だったらFAXでも展示した方がわかりやすいだろう。


では何故東京で現金を使ってしまったか、というとやはり習慣の問題である。


私が地元で使う施設など、コンビニとイオソ、ウォソツの3択であり、それらの店が対応している支払方法はすでにわかっている。


しかし、初見の店は何が対応しているかわからないし、対応支払い方法をレジ前に掲示していない店舗が意外と多いのである。


羽田空港には紀ノ国屋スーパーが入っており、そこでポンデケージョ風チーズパンを買うのが、JAL機内誌の浅田次郎先生のエッセイに並ぶ数少ない東京の楽しみなのだ。


紀ノ国屋といえば高級スーパーのイメージだったが、このパンは210円というお手頃価格で、飲み物などもかなり安いため、ある意味コンビニよりも使い勝手が良い。


しかしレジ前のノーヒントぶりだけは全く評価できない。


私の視野が2度しかないためおそらく見落としているだけとは思うが、コンビニよりわかりづらいのは確かであり、いつも決済方法を把握する前に支払いの順番が来るため、惰性で現金払いをしてしまっている。


しかし、これも支払いの時に対応決済方法を尋ねればいいだけの話だ。


本当に現金しか対応していない、もしくは「無視」という都会の洗礼がなければ何らか教えてくれるはずである。


私は、1ターンでも多く店員とのやり取りを減らすというRTAを日常的に行っているため、決済方法を尋ねるという習慣がなく、レジ前に来た時点で対応支払い方法が不明だと、とりあえず現金で払う習性になってしまっている。


44円などを人差し指と中指で小銭入れからひねり出すより、決済方法を聞いた方がお互い早いのだ。これからは臆さず聞く習慣をつけなければならない。


しかし、聞いたところで自分が持っている決済方法に対応していないという二度手間も予想されるため、つい対応率が最も高い現金を使いがちになってしまうのだ。


つまり、あらゆる電子マネーとスマホ決済、そしてクレカを所持しておけば良いということになるが、そういう問題でもない。


何故なら支払い方法を分散させすぎると、キャッシュレス決済の恩恵であるポイントまでも分散してしまうからだ。


気が付けば財布の中が、最初の1個しかついていないスタンプカードだらけになっているのと同じように、多種多様なポイントが中途半端に溜まるだけになってしまう。


私はスマホ決済は楽天ペイを利用している。


対応店が一番多いのはpaypayらしいので、それを使った方がいいように思えるが、クレジットカードも楽天であり、iDeCoやNISAも楽天証券なので、楽天ポイントを重点的に貯めるには楽天ペイの方が良いのだ。


ともかく今度羽田の紀ノ国屋でパンを買う時は、キャッシュレス決済でキメてやりたいので、調べておくことにした。おそらくこんなことを事前調査しているのは私ぐらいのものだろう。


調べてみたところ、なんとスマホ決済には対応しておらず、各種クレカ、交通系IC、ID、楽天Edy、WAON、そして銀聯カードなるものしか対応していないと判明した。


スマホ決済が対応していないのは意外だが、何せ場所が羽田空港である、多くの人間がここから電車などに乗るため、スマホ決済よりも交通系IC所持者の方が多いのだろう。


同じように駅ナカの店舗は交通系ICを使っている店が多い。


またJALはイオソとズブズブなのでWAON対応なのも必然である。


また聞きなれない銀聯カードは中国の決済システムらしい、そのぐらい日本に訪れる中国人が多いことを物語っている。


このように採用されている決済方法は、場所や企業同士の繋がりによって変わってくるため、結局一番汎用性があるのは現金、そしてクレカということになるのかもしれない。


私も紀ノ国屋で使えるのは今のところクレカしかない。


しかし私には少額の買い物にクレカを出す習慣もまだないのだ。210円の買い物にクレカを出すのは気が引ける。


だが都会者に聞くと、意外と少額の買い物にクレカを出すのを厭わないというので、店側はそこまで気にしないのだろう。


しかし、210円の買い物に対し、クレカを使用し「支払い回数」を言い出した時点で若干空気が変わって来るのかもしれない。

カレー沢薫

山口県在住の漫画家・コラムニスト。最新作に『ひとりでしにたい』原作(講談社)など。

X(旧Twitter)はこちら:@rosia29

「寝そべり錬金術」は毎週【金】曜日12時ごろ更新!

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色