第91回/歴史的円安の今、外貨は魅力。でもちょっときいてくれ
文字数 2,012文字
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稀代にして奇態、現代を生きる伝説の漫画家・カレー沢薫がtreeに帰還!
前作「ひきこもり処世術」で大ひきこもり時代を総括したひきこもり・ジェダイ・マスターが次に取り上げるのは……「お金」!
お金にまつわる四方山話を集め資産2兆円(脳内)を目指すカレー沢薫の旅がつづく。
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GW(ガッデムウイーク)が終わった。
もちろん我々無職やフリーランスにGWは関係ない、むしろ我々は休日終わりを無痛にするために無職をやっていると言っても過言ではなく、それ以外のメリットは特にない。
しかし、日本は金曜の夜と日曜の夜で、感情ジェットコースターしたがる奴の方が過半数というマゾヒズム大国なので、GWが関係ある人間の方が多く、各所大いににぎわったようである。
しかしGW中に円が大幅にナーフされるというリアルガッデムなクソアプデが来てしまったせいで、主に欧米に旅行に行った者は、ハンバーガー1個に数千円取られるなど大変だったようである。
そんな円安も、国外はおろか部屋からも出ないひきこもりには無関係のように思えるが、そんなこともない。
円が弱体化すれば輸入品が高くなり物価が上がる、実際日本の物も軒並み高くなっている。
私はGW無関係勢だが、夫はGW関係勢力なので、連休中に地元で開催されているオクトーバーフェスに行ってきた。
何故、5月なのにオクトーバーなのか、さすが華がないことに定評がある我が県、これから新緑の季節なのにもう草木が枯れる季節先取りか、と感心したが、ドイツのビール祭の名前らしい。
その名の通り、ドイツビールを提供する露店が並ぶ祭なのだが、どれも高い、1杯1000円以上はする、ちなみにバケツではなくジョッキ1杯だ。
しかしこれは物価高というより「お祭価格」であり、GWに行楽に来ている、という人並み感を味わえる料金込みでこの値段なのだ。
しかし、つまみとして購入した「チーズナチョス900円」を客が見えるところでドソタコスの袋を開封し、皿に盛って出すのだけはいただけない。
ドソタコスが悪いわけではない、湖池のことは私も高く評価している、しかし「客の見えないところでドソタコスを皿に盛る料」込みの900円にしてほしかった。
これを考えると、私が飲み物として買ったペットボトルのコーラが200円だったのは破格と言ってもいい。
もしこれが祭っぽい容器に注がれてストローがついていたら、500円ぐらいにはなっていただろう。
祭に来ておいて物の値段を気にするというのは、同人誌即売会でDB(ドスケベブック)の値段を見て購入を躊躇するぐらい愚かなことであり、どれだけ高くても「完売前に買えた」ことをまずお喜び申し上げるのが正しいお祭仕草である。
しかし、お祭価格も昔より高騰している気がしてならない、GW国内派も想像以上に金がかかってしまったのではないだろうか、つまり「室内派」の一人勝ちである。
そして室内派から24馬身離れての2着が「ドル勢」だ。
日本からドル圏に行った者とは逆に、ドルを持って日本に来た者は、安価で日本のサービスをエンジョイできたのではないかと思われる。
つまり諸外国から見れば、すでに日本は物価の安い後進国扱いかもしれないということだ。
藤木源之助も最近何かと呼ばれて「日本はまこと貧しくなり申した」と言わされて大変である。
もはや円は信用できない、これからはドルなど外貨を持つ時代である、実際目ざとい人間はすでに持ち金をドルに換えており、今頃大儲けらしい。
ならば自分もと思うが、当然上がり切ってから買っても意味がない、これから上がるものを安いうちに買っておくのが相場というものである、つまり先を読む力が必要なのだ。
数年前、今トルコ政権がヤバく「トルコリラ」が下がっていると聞き、トルコリラを購入したことがある。
今思えば何故そんなことをしたのか謎だが、多分「おもしろい」と思ったのだろう。
その結果10万円で購入したトルコリラが現在「4万8千円」という、本当に他人にとって面白いことになってしまった。
これが乙女ゲーだったらおもしれー女フラグが立つのではと思ったが、どんなに女に飽きてる男でも、外貨で大損している女にはときめかないだろう。
確かに、日本が衰退の一途を辿る現在、外貨を持つことも大事だが、為替リスクというのは想像以上に怖いので、安易に持ち金を全て一種類の外貨にするような真似はやめた方が良い。
結局トルコリラは、ここまで下がったら、いつかは上がるだろうという気持ちで今も持ち続けている。
もし、今後トルコが崩壊して国がなくなったら、トルコと共に私の10万円もこの世から消えたということを思い出して黙とうをささげてほしい。