初めて手に取る「時代物」に

文字数 944文字

 子どもの頃、母の田舎に泊まりに行った夜は祖父と一緒にテレビで時代劇を観るのが習慣でした。
 当時は8時台に時代劇が多く、年末には必ず「忠臣蔵」がありましたし、年始には大型時代劇がありました。
 そして今。
 段々と時代劇は少なくなり、触れる機会が少なくなったせいか、時代物はなんとなくとっつきにくいもの、という印象があるかもしれません。
 現在のように便利なものはない時代。
 携帯どころか電話も車も電気もない。
 伝える手段が、口頭か手紙だけ。
 私が、その「不便」な江戸時代を舞台に選んだのは、現代から遠すぎず近すぎず、庶民が元気な時代に思えたから。そして、今のようにデジタルの助けがない時代だからこそ、人々は不思議なものを素直に恐れていたのではないかと思ったからです。
「時代物ってなんだか小難しそう」
 でも
「あやかし物とか、何かオプションがあるものが好き」
 そんな方に手に取ってもらえたら。
 初めて時代物を読む方にもできるだけわかりやすく、を心がけているつもりです。
「古着屋紅堂 よろづ相談承ります」では、古着屋店主である新見真白と、平安貴族である九条實親のコンビが登場します。
 古着屋を営む真白には、特殊なスキルは何もありません。古着を売り買いしながら日々を暮らしている庶民です。
 時代物で難しいのは、その時代の独特な事柄の説明。
 そこで、この時代に疎い平安貴族の實親が質問し、真白がそれに答えるという形にしました。
 これなら多少砕けた表現でわかりやすく説明できると思ったのと、平安時代のことにも少し触れることができる。
 そこから江戸時代や平安時代に興味を持ってもらえたら。
 その興味の入り口になれたら、と願っています。
 最新巻となる3巻では、嫉妬を描いた物語を2編収録しています。
 どんな時代でも、人は誰かを愛する。
 真白&實親のコンビと共に、2人の女性の愛の行く末を見届けてください。



玖神サエ(くがみ・さえ)
山口県出身。
エブリスタに掲載した本シリーズでデビュー。
インテリメガネ好きの手フェチ。
見かけるとつい買ってしまうものは製菓用の器具と材料。

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