ハローワークってどんなとこ?

文字数 1,016文字

 取材でハローワークを訪れるうちに、僕は天職なるものについて思いをめぐらすようになりました。一見、天職という言葉とは無縁な感じがするハローワークには、熱いドラマが満ちていたのです。
 ハローワークといえば、まずなにをイメージするでしょう? 失業手当をもらいに行くところ――たぶん、そんな感じでしょう。身近なようで、あまり身近でないのがハローワーク。自分にとってハローワークが身近な存在になった時、それはおおむね好もしい状況ではないように想像されます。
 厚生労働省東京労働局さんにお願いし、取材をしてみると、さまざまな形態のハローワークがあることが分かりました。渋谷駅からほど近い、宮益坂のビルのワンフロアにあるマザーズハローワーク東京は、仕事と子育ての両立を応援する専門ハローワークです。相談窓口の側に、お子さんが遊べるチャイルドコーナーがあって、見守りスタッフも配置されています。担当者が専任で、相談者の実情を踏まえた仕事と子育ての両立をバックアップ。とても明るい雰囲気で、ここに来ただけで前向きになれそう。
 東京新卒応援ハローワークも、とても雰囲気がいいです。高校、専修学校、短大、大学、大学院の新卒者および卒業後概ね3年以内の方の就職活動をサポートする専門ハローワークで、西新宿の超高層ビル内にあります。求人案内だけでなく、応募書類の添削や模擬面接を実施するなど、就活生の不安を解消し、本番への備えに力を貸してくれます。若者たちの活気に満ちて、さながら都市型キャンパスといった雰囲気です。
 ハローワークには就職支援ナビゲーターと呼ばれる相談員さんがいますが、この方たちにもそれぞれドラマがあります。『天職にします!』は、誰もがその存在を知っているのに、実はよく分かっていないハローワークを舞台に、そこで働く人と、そこにやってくる人が織りなす悲喜こもごもを描いたお仕事探し小説です。そして天職とはなにかについて、主人公がたどり着く物語でもあります。



上野歩(うえの・あゆむ)
1962年、東京生まれ。専修大学文学部卒。'94年、『恋人といっしょになるでしょう』で第7回小説すばる新人賞を受賞。近著に『市役所なのにココまでするの!?』『鋳物屋なんでもつくれます』『労働Gメンが来る!』『キリの理容室』などがある。

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