どんな会社で働きたいですか?

文字数 1,027文字

 以前は年末になると、恒例のように忠臣蔵関連のドラマが放送されたり映画が上映されてたりしていましたが、近頃はあまり見られなくなりました。
 これはどうも、会社員の愛社精神というものが希薄になってきたせいのようです。原因は色々あるでしょうが、就職活動の変化がその一因のような気がしています。
 平成時代に就職活動は大きく変わりました。学生は手間をかけずに何十社にもエントリーシートを送ることができます。転職者は人材紹介サイトに登録して、こんな会社がありますよ、という提案を待つことができるし、履歴書や業務経歴書を登録しておけば、企業から直接ウチの会社を受けてみませんかと連絡がくるサービスもあります。
 便利なツールがあると、その機能を使うことに囚われてしまい、本当の目的が見えづらくなります。自分が選んでいるつもりでも、結局は、受け身の就活になっているケースが多いのではないでしょうか。
 入社の経緯がそういう具合だと、会社への愛着や思い入れが薄れていくのは自然な流れかもしれません。愛社精神という言葉を多くの人が口にしていた頃は、江戸時代の忠義物にも共感できたけれども、それが希薄になった世の中では受け入れ難いということのようです。
 そんな忠臣蔵にとって逆境の時代に、時を現代に移して忠臣蔵の世界を再現したらどうなるのだろうと考えました。
 どうせ働くのなら、惜しみなく力を発揮したくなるような会社で働きたいと願うのは今も昔も変わりはないはずです。経営陣と社員が互いにリスペクトし合い、互いに誇りに思える会社なら、会社人生意気に感じることができるのではないでしょうか。
 そんな会社と社員の物語であれば、現代版忠臣蔵にも共感してもらえるのではないかと思い、書き上げました。
 赤穂浪士の討ち入りが成功したのは、今で言えばプロジェクト管理ができていたからだと思います。現代の浪士(退職者)四十七人によるビッグプロジェクトを楽しんでいただければ幸いです。



建倉圭介(たてくら・けいすけ)
1952年生まれ。1997年『クラッカー』で第17回横溝正史賞(現・横溝正史ミステリ大賞)佳作入選し、デビュー。2006年に刊行した『デッドライン』が「このミステリーがすごい!」でベストテンのランクイン。著書に『マッカーサーの刺客』『ディッパーズ』『ブラックナイト』など。

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