銀幕の思い出

文字数 1,056文字

 銀幕という言葉を知らない若い人も増えているかもしれない。
 銀幕とは映画を映すスクリーンのことだ。そこから転じて映画自体を指す言葉として使われている。かつてスクリーンは表面に銀皮膜を塗布していたのでこう呼ばれたようだ。
 昭和のテレビ全盛期には各テレビ局に映画を放映する枠があって、それぞれ解説者がいて映画の見所などを判りやすく教えてくれた。
 NET〈日曜洋画劇場〉の淀川長治、TBS〈月曜ロードショー〉の荻昌弘、日テレ〈金曜ロードショー〉の水野晴郎、フジ〈ゴールデン洋画劇場〉の高島忠夫、NET〈土曜映画劇場〉の増田貴光、他にも今野雄二や白井佳夫、福岡翼、南俊子、渡辺祥子、木村奈保子などが映画の魅力を伝えてくれた。
 それらの番組で数多くの名作に接するうちに、やがて映画館で映画を観たくなってくる。
 大人に連れられて観に行ったのは怪獣映画だったが、初めて大人の付添いなしで観に行った映画は天地真理主演の『虹をわたって』と高橋洋子主演の『旅の重さ』の二本立てだった。中学校のクラスメイト数人で観に行った。その中の一人である北沢君に二百円で入場できる中野名画座を教えてもらって、ちょくちょく観に行くようになった。
 高校生の頃には通学途中にあった早稲田松竹で授業をサボって『ヘルハウス』を一日中観ていた記憶がある。
 大学に進むと銀座並木座で黒澤明の三本立てを観るなど今となっては体力が保たないだろう事にもチャレンジしている。
 その頃には映画専門誌〈キネマ旬報〉の読者の映画評欄の常連投稿者となって試写会の招待状などがキネマ旬報社から送られてくるようになり利用させてもらっていた。
 今作は、そんな映画への情熱を思う存分にぶつけた作品となっている。
 本作を読んだ後に映画館に行ってみたいと思ってもらえたら嬉しい。



鯨統一郎(くじら・とういちろう)
1998年『邪馬台国はどこですか?』でデビュー。傑作・怪作・奇作・話題作を連発する、本格界随一のトリック・スター。著書に『努力しないで作家になる方法』『作家で十年いきのびる方法』『恋と掃除と謎解きと ハウスワーク代行・亜美の日記』『ベルサイユの秘密 女子大生桜川東子の推理』『女子大生つぐみと邪馬台国の謎』『テレビドラマよ永遠に 女子大生桜川東子の推理』『三つのアリバイ 女子大生桜川東子の推理』『文豪たちの怪しい宴』『歴史はバーで作られる』などがある。

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