「不眠の呪い」をお届けする衝撃作

文字数 890文字

「インソムニア」、意味は「不眠症」です。そして本作は、不眠症を解説する実用書ではなく、ミステリーです。
 
 人はなぜ不眠症になるのか?
 
 そして、不眠症は人体に、社会的に何を引き起こすのか?
 
 自衛隊内で起こった事件を追うことで、「不眠の呪い」について紐解いていきます。
 
 睡眠障害には、外因性と内因性があると考えられています。たとえば、脳の視床下部が損傷すると、外部から大脳皮質への刺激が遮断されず、不眠の症状が発現すると、作中登場する医師は説明しています。
 
 しかし、医学的な説明はできても、その解消に至るまでの道は別物です。
 
 本作の登場人物は、内因性の不眠症を抱えています。その原因はPKO派遣中に発生した事件によるPTSDですが、通常の治療では症状が改善されず、医師は別の原因を模索します。この真相が謎となり、終盤に向けて徐々に明らかになるのですが……事件の真相とは、なぜ隊員たちは不眠の呪いを受けたのか、と、ここから先は本書をお読みください。
 
 ミステリ評論家の千街晶之さんが、本書の解説で本作の背景とともに、シェイクスピアの『マクベス』にも通じる不眠の呪いについて書かれています。呪いとは自らにかける暗示。罪悪感が呪いとなり、安眠を奪う、ということでしょうか。
 
 現代社会ではスキャンダルや不祥事、偽装、隠ぺいが跋扈し、その当事者は眠れぬ夜を過ごしていることでしょう。しかし、その真相が語られることはなく、犠牲になっている人たちもいるはず。
 
 何が人から眠りを奪い、何が人を壊すのか。

 本作ではフィクションを通じて、その難題に挑戦しました。ミステリー史上もっとも衝撃的なラスト!(を目指した本作)。読了後は、安眠が(食欲も⁉)奪われること請け合いです。



辻寛之(つじ・ひろゆき)
1974年富山県生まれ。埼玉県在住。2018年に『インソムニア』(『エンドレス・スリープ』改題)で第22回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー。

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