福音と災厄のはざまに生きる

文字数 1,136文字

 2024年6月16日(日)、日本テレビ×Huluの共同製作にて、拙著「SCIS 科学犯罪捜査班 天才科学者・最上友紀子の挑戦」シリーズが原作のドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』の最新章SPが日本テレビ系で放送されます。放送終了後には、Huluにてシーズン3(全5話)が配信される予定です。
 今回の放送と時を同じくして、原作シリーズ最新作『SCIS 最先端科学犯罪捜査班 SS Ⅱ』が発売になります。本作品は著者にとって初めてのシリーズもので、通しで7巻まで続いてきました。毎回、ネタには頭を悩ませていますが、今回もなんとかショッキングなネタを見つけました。第一章では、禁断の科学技術ともいえる“頭部移植”を取り上げます。また、第三章では“吸血鬼”が登場しますが、吸血鬼が生き血を吸う動機は、人類が夢見る“若返り”です。驚くべきことに若者の血液には人を若返らせる効果があるというのです。
 思い返せば、このシリーズは「はたしてこの科学技術は人類に福音をもたらすのだろうか? それとも、災厄をもたらすのだろうか?」という問いかけが原動力になっています。もともと科学的な分野に興味があり、大学も理系へ進み、最新の科学分野に関する本をよく読んできましたが、心の奥底では科学への畏れがあるのかもしれません。本作の登場人物でいえば、作者は長谷部勉警部のキャラクターに一番近いのでしょうね。『SS Ⅱ』を書きながら、あらためてその思いを強くしました。
 科学を畏れていようとも、科学技術は日進月歩の速度で進んでいきます。後戻りをすることもできず、その速度を落とすこともできません。これからの10年はいままでの10年とは桁違いの科学的な進展がなされるはずです。生成AIの法整備が行われようとも焼け石に水でしょう。科学技術の進展が人類にとって福音となるのか災厄となるのか。その時代を生きてみなければわからないことです。そんな大変な時代に起こりえる科学的な事件をこれからも扱っていきたいと思います。



中村 啓(なかむら・ひらく)
東京都出身。第7回「このミステリーがすごい!」大賞・優秀賞を受賞し、『霊眼』(宝島社)にてデビュー。著書に『美術鑑定士・安斎洋人「鳥獣戯画」空白の絵巻』(宝島社)、『黒蟻 警視庁捜査第一課・蟻塚博史』『Z1-KILL 真夜中の殴殺魔』(中央公論新社)などがある。近著に『無限の正義』(河出書房新社)がある。異色のサイエンスミステリーの「SCIS 科学犯罪捜査班」シリーズで注目を浴び、同シリーズは以前に日本テレビ系およびHuluでドラマ化され話題となる。

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