外出禁止の世界でも事件は起きる! 警察官・アキオと猫型ロボットのバディ物語

文字数 1,057文字

 四年前、私たちは緊急事態宣言下にあり、自宅や職場、その他もろもろの身近な場所に逼塞を余儀なくされていました。
 ウイルスそのものへの恐怖や、将来の見通しが立たないことへの苛立ち、まるで世界が崩壊に向かって突き進んでいるかのようにも感じ、精神衛生上良くない状況でした。
 それで私は物書きらしく、誰にも頼まれないまま短い小説をいくつか書き、ひとつがこの『繭の季節が始まる』になりました。
 コロナ禍最中の世界に似ているのですが、時代設定は近未来。未来の私たちは、繰り返されるウイルス禍を健全に乗り越えるため、《繭》システムを生み出しました。強力な新型ウイルスの感染拡大が検知されると発動し、ほとんどの人が自宅などに終息まで引きこもることを強制されるのです。
 どうせ閉じこもらないといけないのなら、それは「軟禁」ではなく、温かく居心地のいい《繭》に包まれる感覚であってほしい。そんな無意識の願いからつけた名前です。
 ほとんどの人が引きこもると書きましたが、《繭》に入ることができない人もいます。それは、医療機関にお勤めの方であったり、主人公のような警察官であったりします。
 複数の人間が一緒にいるとウイルスを感染させる可能性があるので、単独行動が求められます。そのため、警察官の相棒としてAI搭載の猫型ロボットが発案されました。ロボ猫と書くと、皆さんかの有名な猫型ロボットを思い浮かべてしまうようですが、ここに登場する猫型ロボットは本当の猫くらいのちっちゃなサイズです。凶暴なので、ご家庭では飼えないスナネコ型です(なぜか自慢げ)。
 この猫型ロボットが優秀で、警察のシステムと連動して各種情報を検索するなど、捜査の役に立ってくれます(そしてかわいい)。
 外出禁止の世界なのに、人と会ってはいけないのに、それでも事件は起きるのです!
 主人公アキオとロボ猫・咲良のバディー物語を、ぜひお楽しみくださいませ。



福田和代(ふくだ・かずよ)
1967年兵庫県生まれ。神戸大学卒。システム・エンジニアを経て、2007年『ヴィズ・ゼロ』でデビュー。’08年、首都大停電がテーマの『TOKYO BLACKOUT』が話題に。クライシス・ノベルを中心に発表する中、女性自衛隊員の日常の謎を描く爽やかな「航空自衛隊航空中央音楽隊ノート」シリーズも大きな支持を得る。その他の著書に『侵略者(アグレッサー)』『スパイコードW』など多数。

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